半沢、ナギサ、MIU…圧勝の「TBSドラマ」その裏で模倣作が増える懸念

各局の戸惑いが見え隠れ
木村 隆志 プロフィール

安易な模倣で失われるドラマの多様性

ここまでの話を整理すると、3作がヒットしたことで、『私の家政夫ナギサさん』は「深みを排除した牧歌的なムード」、『MIU404』は「すでに供給過多な刑事ドラマというジャンルの量産」、『半沢直樹』は「極端な勧善懲悪ストーリー」。これらを各局が模倣してしまうことが最大の懸念となる。

テレビ業界が視聴率によるマネタイズを変えない限り、各局のマーケティングは偏りやすく、たとえば、『JIN –仁-』(TBS系)以降タイムスリップ時代劇が量産されたり、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)以降「飯テロ」が量産されたりなどの過去を見ても、そのことがわかるだろう。来年以降、「『私の家政夫ナギサさん』のようなドラマ」「『MIU404』もどきのドラマ」「『半沢直樹』の劣化版」が増えたとしたら、テレビの未来は暗い。

 

そんなヒット作の模倣は、「視聴者ニーズに応えている」と言えば聞こえはいいが、実際は「安易な追随で、クリエイティブの放棄」という感が強く、それは作り手たちもわかっているはずだ。各局が複数のドラマ枠を持つ最大のメリットは「多様性を見せられること」であり、それを保つためにはさまざまなジャンルの作品に挑戦していくしかない。

最後に他局にはないTBSの強みにふれておくと、それは「メインのターゲット層に強く訴求しつつ、サブターゲットにも届くような工夫を凝らす」という2段構えの制作姿勢にある。

『私の家政夫ナギサさん』の“火曜ドラマ”は女性層、『MIU404』の“金曜ドラマ”はドラマフリーク、『半沢直樹』の“日曜劇場”は男性層をメインターゲットとしてガッチリつかんだ上で、さらに「それ以外のサブターゲットをどう取り込むか」という難題に真っ向勝負。

たとえば、『MIU404』なら菅田将暉のサプライズ出演、『私の家政夫ナギサさん』なら漫画『北斗の拳』の話題、あいみょんや米津玄師の主題歌起用なども含めて、「やれることはすべてやる」という姿勢が伝わってくる。

ただ、この点でTBSの編成担当とプロデューサーが他局よりも先を行っているだけであって、決して他局とスキルの大差があるわけではない。むしろスキルが拮抗しているからこそ、編成担当とプロデューサーの熱とバランス感覚が今回の勝利を呼び込んだとも言える。

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