半沢、ナギサ、MIU…圧勝の「TBSドラマ」その裏で模倣作が増える懸念

各局の戸惑いが見え隠れ
木村 隆志 プロフィール

「やっぱり刑事ドラマでいいんだ」の誤解

次に『MIU404』の功績は、数ある刑事ドラマの中でも最高峰のクオリティを見せられたこと。

2010年代を振り返ると「プライムタイムの約半数が刑事ドラマ」というクールが多く、7割を超えたときすらあった。明らかに供給過多であり、若年層のドラマ離れと視聴者層の高齢化に歯止めがきかない中、「老若男女を引きつけられる刑事ドラマ」の一例を示した価値は高い。

『MIU404』(TBSテレビ)公式サイトより
 

しかし、バリエーション豊かな脚本、疾走感あふれる演出、硬軟織り交ぜた演技など、すべての面で質が高かった反面、企画としての志は高くなかった。

『MIU404』は他作と同じように「失敗の少ない一話完結の刑事ドラマ」という安全策からスタートした作品であり、綾野剛と星野源のコンビは『コウノドリ』(TBS系)で人気を実証済み。さらに、直情かつ肉体派と冷静かつ頭脳派のバディなど、刑事ドラマのセオリーに沿って組み立てたプロデュースは、クリエイティブなものとは言い難い。

スタッフもキャストも業界トップクラスの人材がそろい、クオリティが高かったことは間違いないだろう。

だからこそ、そのクオリティを刑事ドラマという供給過多で若年層が避けがちなジャンルではなく、『私の家政夫ナギサさん』や『半沢直樹』のような希少価値の高いジャンルで発揮してほしかった。「これほどのスタッフとキャストが刑事ドラマを作っている」こと自体が、ドラマから多様性を消し、視聴者層を限定しているという課題を象徴している。

何より懸念されるのは、各局の作り手たちが『MIU404』を見て、「やっぱり刑事ドラマでいいんだ」と思い込んでしまう可能性が高いこと。「刑事ドラマが全体の7割を超える」という極端な偏りが再来したら……毎週誰かが殺されるドラマがこれだけ量産される状態が健全とは言えないはずだ。

そもそも刑事ドラマの量産は、「録画視聴やネット視聴がこれだけ発達しているにもかかわらず、それを無視してリアルタイム視聴だけを求めるテレビ業界の時代錯誤によるもの。マーケティングのスタート地点が実態とズレているから、「毎日のように刑事ドラマが放送され、優秀なスタッフとキャストをそこに押し込めてしまう」という偏りを生んでいるのだ。

『MIU404』への称賛はいいが、続編を望むより「今度は別のジャンルを見たい」という声を挙げるほうが、良作に出会えるだろう。

編集部からのお知らせ!

関連記事