半沢、ナギサ、MIU…圧勝の「TBSドラマ」その裏で模倣作が増える懸念

各局の戸惑いが見え隠れ

3作が全話2桁視聴率を記録

1日、『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)の最終話が放送され、自己最高を更新する世帯視聴率19.6%を記録したほか、ネット上に「ロス」の声が飛び交うなど、大盛況のうちに幕を閉じた。

4日には『MIU404』(TBS系)の最終話が予定されているが、こちらも平均世帯視聴率11%台を記録しているほか、ネット上には称賛の声がズラリ。さらに、全話世帯視聴率20%超を叩き出し、ツイッターのトレンドワードを席巻する『半沢直樹』(TBS系)は別格の強さを見せている。

TBSの手がけるドラマ3作が全話2桁視聴率を記録し、ネット上の話題をほぼ独占しているのだから、かつてないほどの圧勝と言っていいだろう。

野球にたとえると3打数3安打の猛打賞で、そのうち『半沢直樹』がホームラン、『私の家政夫ナギサさん』と『MIU404』がツーベースといったところか。とにかく「他局のドラマは放送されていないのか」と錯覚させるほどの快進撃を見せている。

各ネットメディアもページビューを獲得すべく3作の関連記事を量産しているほか、ここに来て「一人勝ち」というTBSの礼賛記事も目立つ。しかし、この3作のヒットは、TBSの功績であるとともに、実は今後に向けた懸念も潜んでいる。

 

掘り下げない「いい感じのドラマ」ばかりに?

順に掘り下げていくと、まず『私の家政夫ナギサさん』の功績は、コロナ禍でストレスがたまりやすい状況の中、悪い人のいない牧歌的なムードを貫いて視聴者を癒したこと。また、ラブコメなのに笑いを抑えて癒しに徹したことや、家事に光を当てて世の主婦たちをねぎらったことも特筆に値する。

『私の家政夫ナギサさん』(TBSテレビ)公式サイトより

もともと「普通のOLが3人の男性から好意を抱かれる」という女性向け漫画を思わせるファンタジーであり、大森南朋、瀬戸康史、宮尾俊太郎、眞栄田郷敦と、年代とタイプの異なる俳優をそろえて、王子様のような優しい男性を演じさせることで、女性視聴者を引きつけていた。

そして、もう1つ忘れてはいけないのは、特別な出来事は起きず、過去のトラウマもほとんどなく、何気ない日常を淡々と描き続けたこと。「強烈な設定や展開で話題性を生み出そう」というドラマが多いだけに、この点は称賛されるべきところだろう。

この中で懸念されるのは、「悪い人のいない牧歌的なムードの作品を各局が模倣しすぎてしまう」こと。同作のヒットを受けて似たムードのドラマが各局で制作されるとしたら、危険な兆候と言わざるを得ない。

悪い人のいない牧歌的なムードのドラマは、癒し以外のものを感じさせにくく、ドラマティックなシーンを生み出すことが難しい。

実際、『私の家政夫ナギサさん』はワークライフバランスなどの働き方も、家事と対価の関係性も、アラサー女性の結婚観も、現代の母と娘の葛藤も、すべて掘り下げることなく、最後まで「何となくいい感じのドラマ」だった。もし今夏、似たムードのドラマが他局でも放送されていたら、ここまでヒットしなかっただろう。

同作はコロナ禍の中、癒しを感じさせる唯一のドラマであったことに加えて、多部未華子という好感度の高い主演女優と、あいみょんの主題歌がそろい踏みしたからこそのヒットであり、もし他局が追随したら不発に終わるのではないか。