すでに歯石がついている場合は?

ホームケアについて、お分かりいただけただろうか。しかし上記のホームケアは、すでに歯周病で歯に痛みがあるような場合や、歯石がガッチガチについている場合などは、あまり有効とはいえない。歯石の上から歯を磨いたところで、歯石は取れないからだ。また痛みがあるときに無理やり歯磨きをすると、嫌がって歯を磨かせてくれなくなることもある。

すでに何らかの口腔内トラブルがある場合は、まずは一度動物病院へ相談に行き、麻酔下でのスケーリングを検討して欲しい。

とはいえ、「口臭や歯石、歯周病は気になる、でも全身麻酔が怖くてスケーリングはしたくない」という意見を聞くことは多い。
これについては、2017年に少し安心できる論文が発表されている。心臓病の犬でも、歯科処置における麻酔リスクは健康な犬と明らかな差があるとは言えないというものだ文献3

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また、例えば歯を磨くだけでなく、抜く必要がある場合、麻酔時間は伸びていく。少しついてしまった歯石を取るなどの予防的な歯科処置であればそこまで時間もかからず、麻酔時間も短く、金額も安く済む。
しかし、歯周病が進行してしまい、例えば奥歯を抜く必要がある場合などは、まず歯を割ったり、抜いた後歯茎を縫ったりしなければならないため、処置の難易度も増し、麻酔時間も伸び、犬の負担も金銭的な負担も増える。また、悪い歯を抜いていった結果、歯が一本もなくなってしまうことだってある。

犬の場合は、犬食いと言う言葉があるように、ほぼ噛まずに食べ物を飲み込んでいることも多く、歯がなくても意外に食べられる。しかし、舌がずっと口の端から出続けたり、ポロポロと口の端から固形フードがこぼれ落ちてしまったりすることがある。
また猫では歯の痛みが原因で全くご飯を食べなくなることもあり、絶食によって肝リピドーシスといった命に関わる病気に発展することもあるので注意が必要だ。

どうしようもなくなってから歯を抜くより、若い頃からホームケアを行いつつ、健康診断感覚で定期的にスケーリングを行う方が、愛犬・愛猫にとっても負担が少ないことを、お分かりいただけただろうか。

たかが歯だと思うかもしれないが、されど歯。ほぼずっと家にいてオーナーの帰りを待つペットたちにとって、食べるということは、お散歩や睡眠、オーナーとの触れ合いと同じくらい大事な楽しみだ。
その楽しみを奪わないためにも、デンタルケアについて一度考えてみて欲しい。

ペットが健康に食べることを続けられるようにするためにも、歯のケアは大切なのだ Photo by iStock
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