歯周病のある人はコロナでも重症化する可能性があることが報じられたが、歯周病は他の病気にも大きくかかわることがわかっている。実はペットの歯周病も健康に大きな影響を与えるのだという。どのように歯周病になるのか、予防策はあるのか。なったらどうしたらいいのか。獣医師で作家の片川優子さんに歯周病の現実と予防策を伝えてもらおう。

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歯がほとんどなくなった実家の犬

先日、興味深い研究結果が発表された。年に1回、スケーリングと呼ばれる麻酔下での歯石取りの処置を行っている犬は、していない犬に比べてなんと死亡リスクが約20%低下するという(文献1)

わざわざ麻酔をして歯の掃除をするなんて、と思うかもしれないが、犬では2歳までに何らかの歯周疾患にかかっている、という報告もある文献2。歯周病は単に歯が汚れている状態ではなく、鼻に穴が開いてしまう眼窩膿瘍や、下の顎の骨が折れてしまう下顎骨折などの深刻な病気につながる、慢性かつ進行性の感染症なのだ。

今回はそんな歯周病と、家庭でぜひ行なって欲しい犬猫の歯のホームケアについてお伝えしていく。

実は、私の実家で飼っているスピッツも、以前から重度の歯周病で、くしゃみや口臭もひどかった。帰省の折にスケーリングを勧めてはいたものの、両親が麻酔をかける事に気乗りせず、そのままになってしまっていた。しかしある日、くしゃみをするたびに血と膿の混じった鼻水を飛ばすようになり、元気もなくなってきたため、ついにスケーリングを行うこととなった。

遠方だったため、実家近くに開業していた先輩の動物病院を紹介し、スケーリングをお願いすることになった。麻酔をかけて口の中を詳しく調べたところ、上顎の臼歯の根本の骨が溶け、穴が開いて鼻と貫通していることが判明した。そこから口腔内細菌が鼻に入り込み炎症起こして血膿混じりの鼻水が出ていたのだろう。臼歯を割って抜き、ぽっかりと開いた穴を閉じるという処置が必要だったため、麻酔時間は長時間にわたった。

片川さんの実家の犬「ナナ」ちゃん、口腔内の治療前。重度の歯周病でほとんどの歯がグラグラだった 写真提供/埼玉県白岡市「いくの動物病院」
ナナちゃん、口腔内の治療後。上顎の臼歯を抜いたところ、大きな穴が空いて鼻腔内と繋がっていた 写真提供/埼玉県白岡市「いくの動物病院」

無事に麻酔から醒めたものの、その後もしばらくくしゃみが続き、一度鼻の中に入ってしまった細菌を殺すために長い期間抗生剤を飲ませる必要があった。スケーリングから半年ほど経った現在は、愛犬のくしゃみも完全に止まり、以前にも増して元気になり、庭を走り回っていると言う。
しかし残念ながら歯はほとんどなくなってしまった。