さて、ここからは「eをiπ回かける」ということの意味についてお話ししますが、そのためにはまず三角関数について振り返らなくてはなりません。三角関数というのは円に関する関数で、円関数とも呼ばれます。指数関数を考えるのにどうして三角関数などいうまた別のものを考えなければいけないのでしょう?
実は三角関数と指数関数は、全く別に見えても共通点のある関数なのです。
高校数学における三角関数の定義を振り返ると、「x軸の正の部分を始線とし、一般角θの動径と単位円との交点のy座標をsinθとする」と定められてました。一般角θは、高校で習う「弧度法」という方法で表します。弧度法とは角度を半径1の円弧の長さで表したものです。たとえば90度はπ/2に対応し、一般にa度はa×π/180に対応しています。角度を「弧度法」で表すことで、三角関数をよりシンプルに記述することができます。
ここで三角関数の定義を疑い深い目で見てみましょう(注意深く見ることが数学では大事です)。一般角というのは円の弧の長さで角度を表した値です。
ではここで円弧の長さが1のとき、y座標はどうなるでしょうか。このような問いを出されたとき、円周の長さがそもそもどのように測られるのかを考えることになります。
円周の長さを最も素朴に測る方法としては、円周上にいくつかの点をとって点と点との距離を足し合わせるという方法が思いつくでしょう。このようにして円周の長さを測るとき「積分」という手段が使われます。
しかし高校数学では積分は厳密には扱いませんから、円周の長さというものは身近にあってもよくわからないものなのです。つまり、実は三角関数は高校数学の範囲内で定義しきれていないのです。