撮影/森清

AKB48の名曲を聞きながら生まれた「女性潜水士」の物語、その魅力とは

海保職員を父にもつ篠田麻里子も語る
日本初の女性海保潜水士を描いた小説『海蝶』。出版を記念して、小説家の吉川英梨さん、現役女性海上保安官の川原山由香さん、元AKB48で海上保安官を父にもつ篠田麻里子さんによる、スペシャル鼎談を敢行!

前編はこちら:「海猿」はいても「海蝶」はまだ…日本初の「女性潜水士」が誕生する可能性

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東日本大震災を経て、海保を志す人が増えた

篠田 『海蝶』の主人公・忍海愛(おしみ・あい)ちゃんが潜水士を目指すきっかけとして、母親の存在があります。愛ちゃんと母親が東日本大震災の被害にあうシーンが物語の中では描かれていますね。

吉川 はい。最初は書くことに抵抗がありました。あれほどの未曽有の災害で、被害に遭っていない私が書いていいのか。被災された方々の気持ちに作家として寄り添うことができるだろうか……とても悩みました。

でも、海保OBの方から、以前は「海猿」人気で海上保安官になりたがる人が目立ったけど、震災を機に「助けてもらったから恩返しがしたい」「人助けをしたい」という動機で志す人が増えているという話を聞いて、少しでも希望につながるのであればと盛り込むことにしたんです。実際、被災地にも足を運びました。

川原山 津波の発生が予測されると海保の巡視船や巡視艇は注意喚起や漁船の誘導をするために出港します。東日本大震災の津波の襲来後は、飛行機や巡視船で沿岸部を捜索し、必要に応じて特殊救難隊などによる被災者の救助を行いました。

 

篠田 人命救助のシーンもそうですし、巡視船が出港する時の保安官たちの緊迫した動きもリアリティがあって、ハラハラしたり、祈るような気持ちになったりしながら一気に読んでしまいました。とても綿密に取材されていますよね。

吉川 足かけ2年にわたっての取材でしたが、海保の方々が積極的に協力してくだったおかげです。国の行政機関で、命にかかわるような業務に携わっているから堅い人が多いのかな、と思っていたんですが、みなさんとても明るくてフレンドリーなんです。事件や事故が起こると無駄のない動きで素早く対応するのに、船を降りるとおちゃらけているというか(笑)。そのギャップがおもしろいし、かっこいいんですよね。

篠田 アットホームですよね。父の転勤で対馬にいた頃は海が近くて巡視船のそばで遊んでいたのですが、海保の人たちが「何かあったら言いにきなよ」ってよく声をかけてくれました。それが子どもの私には心強かった。

吉川 いつも見守ってくれているような、包容力を感じますね。そして、やっぱり海で生きている人は熱いと思う。話を伺っているとみなさん、向上心がすごいんですよ。海に出ている時はもちろん、船を降りて陸での勤務になったら「今度はよりよくするためにシステムを変えるんだ」と目を輝かせている。やっぱり「正義仁愛」が礎にあるんですよね。何度聞いてもいい言葉だな、ってかみしめています。