Photo by iStock

ニュースの信頼回復へ「オンブズパーソン」を再考する

米公共ラジオNPRの積極的な取組み

「メディアの信頼」の議論に欠けた視点

ニュースメディアの信頼をめぐる議論が続いています。先日は新聞記者らと黒川東京高検検事長(当時)の賭けマージャン問題を機に「ジャーナリズム信頼のための6つの提言」 も出されました。私も賛同しましたが、その理由は「人は忘れやすいもの」であり、この問題を黒川氏の退職やメディア関係者の処分だけで済ませてしまってはいけないと考えたからだけで、提言の内容に関しては充分なものとは思っていません。

問題は、この文章が「誰に宛てたものなのか」が明確でないことです。ジャーナリズムが読者やユーザーという一般の人たちのためにあるのなら、賭けマージャンのような取材相手との「癒着」とみなされるメディアの体制が、「ニュースの消費者にとって」どのような弊害をもたらすのかという視点から議論すべきと思います。

 

継続的に理解してもらう「仕組み」が必要だ

提言はあくまで「大方針」を示したものなので、詳細な内容を説明できないという限界があるのは当然だとしても、実際の取材の場面が何一つ思い浮かんで来ません。そうすると、「ああ、またいつものスローガンね」というだけで終わってしまいます。何か問題が起きた時には「問題のありかはどこか」「原因は何か」「改善のために何をすべきか」を明確にしなければなりません。そして、少しずつジャーナリズムの現状を変えてゆくためには、読者やユーザーに理解してもらうだけでなく、同時にメディア関係者にも「これはアドバイスを聞かないといけないな」と納得してもらう必要があります。

これまで行われてきたメディア批判においても、「〜すべきだ」という常套句的な主張と、「そうは言っても、現実的にはムリではないか」というギャップを埋め、「こういうことから始めてみてはどうか」とか「少なくとも、これはできるはずだ」というように、実現可能性が高く、説得力のある具体策を提案できれば、より良い提言になったのに、とも思います。

Photo by iStock

「オンブズパーソン」という可能性

「提言」の2つめの項目には、「報道倫理のガイドラインを制定し」、「記者が萎縮して裏取り取材を控えたり、調査報道の企画を躊躇したりしないよう、社会的な信頼と困難な取材を両立できるようにしっかりと説明を尽くす」とあります。
しかし、日本のニュースメディアのほとんどは、「ガイドライン」や「内規」のようなものは、すでに持っています。公開しようとしないだけです。

日本のニュースメディアの大きな問題点は、例えば、「どんな時に記者は萎縮してしまうのか」などの具体例を明らかにし、解決策を導く作業を継続的に行っていく「仕組み」が欠けていることだと思うのです。

考えうる解決策のひとつとして、「メディア・オンブズパーソン」というものがあります。

「オンブズマン」という制度はスウェーデンが発祥の地と言われています。行政機関が公共のリソースを住民に公平に配分しているかを評価したり、大病院や大学などの教育機関、あるいは企業などが公正に運営されているかを第三者の目で監視するものです。すでにメディアにも導入されて久しいのですが、充分に活用されないまま廃れてしまいました。それをもう一度見直してみては、と思うのです。