国東半島の水田風景(筆者撮影)

コロナ禍で再注目?! 農村漁村のライフスタイルと先人たちの知恵

「世界農業遺産」をたずねて
新型コロナウイルスの流行を受けて、人を密集させる都会のビジネスのあり方に疑問が投げかけられています。一方で脚光を浴びているのが、「密をつくらない」農村漁村のライフスタイルです。
コロナ後には農村漁村への移住者が増えるのでしょうか? 農村漁村に住むことの魅力とは? そしてコロナ後の社会にも役立つ、農村漁村に受け継がれた先人たちの生活の知恵とは?
「世界農業遺産」にも認定されている大分県国東半島から探ります!
 

農村は「密を作らない」

コロナ後は都会から農村漁村への移住が増えると予想している人がいます。イタリア・フィレンツェ大学の専門家とビデオ会議で何回か話す機会がありました。彼はアグロツーリズムに詳しく、また筆者とともに国連食糧農業機関(FAO)で世界農業遺産の審査にも従事しています。

ローマの国連食糧農業機関(FAO)における会議の様子(筆者撮影)

「密を作らない農村のライフスタイルが再注目されている」と彼はいいます。昔ながらの広いスペースを活用して農業が行われている世界農業遺産の認定地などは特に好感度が高く、逆にハウス栽培など近代的な農業で人間の密を作りやすいところは評価が低くなったといいます。

イタリアではコロナ以前から、週末しか開店しない田舎の一軒家的なレストランが予約が取れないほど人気であったり、その近辺のワイナリーも盛況であったりと、身近なアグロツーリズムが人気を博している状況でした。コロナ禍をきっかけに農村漁村のライフスタイルに更に注目が高まるのは自然な動きです。

農村漁村のプラスの面とは?

日本ではどうでしょうか。田舎の一軒家的なソバ屋を訪問する選択肢はありますが、日々の生活に追われてそれどころではないという方も多いようです。農村漁村に移住すれば付近で評判のスポットを簡単に訪問できますが、移住しようにも職業の選択肢が少なく、また子供の教育にも不安がありました。

しかしコロナ禍でテレワークが盛んになり状況が少し変わってきました。また遠隔教育も活発化し、実際、大学では2020年の春夏学期からオンラインでの講義やゼミ、試験が普通になりました。都会から農村漁村への移住の障壁は低下しつつあるように見えます。情報通信インフラなどが今後更に発展すれば、これがニューノーマルになるかもしれません。

ただし今農村漁村が再注目されているのは、コロナ禍で密を作りやすい都会のライフスタイルがマイナスに働いたためです。農村漁村の吸引力がなければこれもやがて頭打ちになるでしょう。農村漁村が自らのプラスの側面を積極的に発信していくことが、今こそ重要になっているのです

しかしこれは簡単ではありません。そこに住んでいる人々にとっては農村漁村の生活や風景の全てが当たり前すぎて、何がアピールポイントなのか見当もつかないという人が多いためです。筆者が訪問した農村漁村でも、そう語る人が必ず何人かいました。そこで今回は、むしろ部外者であるために見えてくる農村漁村のプラス面などを紹介し、コロナ後の日本社会と農村漁村を考えたいと思います。