「今、世界中でラグジュアリーの再編成が求められています。これからは、毎日、誰もが享受できる本質的に優れているもの=エブリデイ・ラグジュアリーの時代です」

そう語るのは、服飾史家・エッセイストであり、大学での教授歴も長く、海外とのビジネスコミュニケーションも多い中野香織さん。アカデミックな考察に裏付けられた、ジャーナリズム性も高い鋭い視点で知られています。

「日常で、毎日使えるものこそ、日本が誇れる素晴らしいものがたくさんある」と言うのは、ファッション業界だけでなく、多くの文化人や企業人から、品のあるスタイリングと人間性で、性別年齢を超えて絶大な信頼を寄せられるファッションディレクターの森岡弘さん。

これからの時代に必要な、毎日の生活の中で使ってみたい、取り入れたい「Japan’s Authentic Luxury」=“JAXURY(ジャクシュアリー)”について、JAXURYなモノを通してお二人に語っていただきます。第一回は、グランドセイコーです。

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今の時代に輝く「エブリデイ・ラグジュアリー」

創業60周年を記念した、初代グランドセイコーデザイン復刻モデル。1960年当時、最も高精度なスイス・クロノメーター規格(最優秀)と同等の精度を実現した「グランドセイコー」が発売された。1998年にはこの基準を超える独自の精度基準「グランドセイコー規格」を設け、国際基準を凌ぐ高精度で実用性ある機械式ムーブメント9Sメカニカルが誕生。進化を続けている。左からプラチナ950、18Kイエローゴールド、ブリリアントハードチタンの各モデル(すべて手巻メカニカル9S64を搭載)。

――まず、そもそもラグジュアリーとは何なのか、アカデミックな立場から中野さんにお話しいただきます。

中野 ラグジュアリー(LUXURY)という語の中には、光(ルクス=LUX)が含まれています。つまりラグジュアリーには「光り輝いているもの」というニュアンスがあるのです。その時代時代で輝いているものがラグジュアリー、と言ってもいい。もともとは王侯貴族の宝飾品、その後は特権階級の富の象徴という時代が、長くありました。

今の時代は、特権を誇示するのはもちろん、バブル時代のようにひけらかすこと自体が、完全に時代遅れ。そうした20世紀的ラグジュアリーは「ダサいもの」になっていますよね。時代が変われば、光り輝くものも変わるのです。

今は、日常的に誰もが享受できて、本質的に優れたもの、つまり「エブリデイ・ラグジュアリー」が求められています。「本質的に優れたもの」という部分は、今も昔も変わらないところでしょう。

ちなみに「エブリデイ・ラグジュアリー」は、今年の初めからミラノ在住のビジネスプランナーの方を中心に経営者・コンサルタントの方々と行っているラグジュアリー研究会のなかで出てきたキーワードです。今後、このコンセプトがますます議論されていくと思います。