人類が「ウイルス」と縁を切ることができない深い理由

「誤作動」という生物の本質を考える
更科 功 プロフィール

「誤作動」は主観的な言葉

生物のシステムを誤作動させることによって、ウイルスは存在する。とはいえ、「誤作動」というのは主観的な言葉だ。細胞内のタンパク質合成システムでウイルスのタンパク質を作るのは、生物にとっては誤作動かもしれないが、ウイルスにとっては正しいことかもしれない。

また、ウイルスは、いつも生物にとって不都合な存在というわけではない。ある種の昆虫はウイルスに感染することによって、毒素に対する抵抗性を得ている。他の例としては、エリシア・クロロティカというウミウシ(軟体動物の一種)がいる。

このウミウシは動物なのに、光合成をすることが知られている。見た目も緑色の葉っぱのようで、ちょっと不思議な生物である。とはいえ、エリシア・クロロティカは、自分の力だけで光合成をしているのではない。藻類を食べることによって葉緑体を取り込み、その葉緑体で光合成をしているのだ。

このように、葉緑体を取り込んで光合成をするためには、ウイルスの助けが必要である可能性がある。ウイルスが生物の役に立っていることも多いのだ。

でも、少し見方を変えれば、地球にとっては生物が生まれたのも間違いかもしれない。とはいえ、ほとんどのウイルスが生物にとって無害なように、ほとんどの生物は地球にとって無害かもしれない。

でも、たまに感染力や毒性が強い、やっかいなウイルスが出現する。もしも地球にとってやっかいなウイルスが存在するとすれば……もしかしたら、それは私たち人類かもしれないのである。

関連記事