「強い」のでも「前向き」でもなく受け入れるだけ

1つ怖かったのは、腫瘍摘出の手術前夜のこと。手術待機の為の3つのベッドしかない部屋になったときに、真夜中に背中に抱きつかれる感じと身体を押し付けられるような金縛りにあったのです。変に向こう側に引っ張られる感じがしたので、全身で拒否をして振り払い、事なきを得ました。変な影響はうけませんでしたが、手術前夜で興奮していて無防備になり、お守りやおまじないをおこたっていて、ちょっと油断していました。

集中治療室とまではいかないまでも、それに近い患者さんがいる部屋で、待機の医師がすぐに対応できる部屋。この部屋に案内された時にちょっと重い感じがして、「病室ずっとここですか?」とちょっと怪訝そうに聞いたところ、「いや、今日だけです、何かあったらナースコールしてくださいね」とベテランに見える看護師さんから即座に返事が帰ってきました、なんか「なるほどな」と思いました。

霊感が強いのも時には考えものだと思いますが、母や弟が旅立っていったのを感じる事が出来たことは、自分の「生と死」に対する感覚を穏やかにしてくれたと思っています。

まだまだ現在では85歳は若い年齢とも言えますが、母は心臓のバイパスの手術を受けていたので、寿命という観点では天寿を全うしたのではないかと思います。母の主治医も、治療中の我々家族に、母の状態を克明に、それこそ予言かと思うくらいに伝えてくれました。逆に弟は天寿を全うしたとは到底言えません、しかしながら大病にかかるとはこういうことなのだという体験を、兄という立場でさせてもらったのです。

私は強くはないと思います、強くいられる自信はありません。京都のALS患者さんの事件の時の私のブログでも、最後にこうしめています。「私が望むことをやってもらって逮捕者が出るとしたら、それは駄目です、私を止めてください」と。つまりそんなことを望むとも限らないから「止めて欲しくて」発信したという意味合いもあります。

ただ医師の凄さを知っていますから、ALSと言う病気の今後をしっかりと説明されて、そして先を歩いていらっしゃるALS患者の皆さんの経験談などにふれて、ええかっこしいの性格をフル活用して……「その事実を受け止めて」そして「出来る事をやっていこう」と決めただけです。

今年のお盆は良く晴れたお墓の前で、母と弟と父に「やれるだけやってみるよ」と報告をしたのでした。

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【ALSと生きる 次回は9月12日公開予定です】

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