日本の支配エリートはコロナでもたない企業は潰れてよいと思っている

反緊縮左派が試されるとき(5)
松尾 匡 プロフィール

円高が進めば淘汰も進む

しかも、消費税減税や一律給付金では国債がさらに膨らんでしまいます。これを今やっているように日銀が買ってお金に換えていたら、円高が抑え込まれてしまいます。

円高は日本の支配エリートにとって、将来の地域帝国主義体制が成り立つ要ですから、政府債務をこれ以上膨らませたくはありません。

その上、今、諸外国がコロナ対策で赤字財政出動を大盤振る舞いしていて、ジャブジャブお金をだしているところです。日本が赤字財政支出を控えめにすれば確実に円高にできます。

そうすれば、「生産性が低い」とされる個人農家や中小零細事業はいっそうの苦境に陥り、着実に淘汰を進めることができます

実際、その後の日本政府の赤字財政支出規模はGDP比でアメリカはじめ他の先進国に見劣りしますので、円ドル相場はコロナ前より2円ほど円高の107円ぐらいでしばらく推移していました。

直近ではさらに円高が進んでいますが、私見ではまだまだ安めだと思います。アメリカの景気回復期待からアメリカ株が上昇しているのが一段落つくと、何もしなければ、一層の円高が進む危険が高いと思います。

 

「これでもたない会社はつぶすから」

現実の政府対策は、東京財団提言発起人のお二人がお怒りのように、多くの需要喚起策や各省庁がこの機に乗じてもちこんだ懸案事業で歪められていますが、基本精神は東京財団提言のものが貫いています。

それに、自民党若手議員による積極財政的な経済政策提言をとりまとめた安藤裕衆議院議員が、粗利補償をしないと中小企業が潰れると訴えたところ、自民党幹部が「これでもたない会社はつぶすから」と答えたと言います。

中小企業の倒産を望むかのような発言が目立つ(photo by iStock)

また、5月3日には通産政務次官の逢沢一郎自民党衆院議員が「ゾンビ企業は市場から退場です。新時代創造だね」とツイートしました。東京財団的ビジョンは、やはり政府自民党上層部に貫かれているのです。

さらに、20年7月17日の『日本経済新聞』朝刊は、「中小企業減 容認へ転換/政府、社数維持の目標見直し 新陳代謝促し生産性向上」と題して、政府が従来掲げてきた中小企業数維持の目標を20年の成長戦略から削ると報じました。

政府関係者は「事実上、廃業の増加を認める方針への転換だ」と解説していると言います。新型コロナで倒産激増の実態に合わせた体をとっていますが、より規模の大きい中堅企業への成長目標や、一人当たり付加価値額の上昇目標は掲げるとあり、この機に乗じて支配エリートのめざす淘汰路線を進めようという感がありありとします。