今の米中関係はWin-Winか?
2020年7月23日、ポンペオ米国務長官はカリフォルニアのニクソン元米大統領記念図書館において「共産主義中国と自由世界の未来」と題するスピーチを行いました。
わざわざニクソンゆかりの場所でスピーチを行ったことには理由があり、約半世紀前にニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官(のちの国務長官)らが進めた対中関与政策を根本的に転換し、中国との対立と競争が米国の外交上の基調となっていることを強調するためです。

米国務省HPによれば、ポンペオ長官は「キッシンジャー博士の極秘ミッションとニクソン大統領訪中から50年を迎える2022年を前に、世界は大きく変わった」と述べています。
次いで1967年に「フォーリン・アフェアーズ」誌に掲載された「長期的にみて、我々は中国をこのまま孤立させておくわけにはいかない。(中略)我々のゴールは(米側からのコミットメントによって)中国に変化を誘発することにある」というニクソンの主張を取り上げ、「米国の政策立案者たちは、中国社会が開放され、自由化し、脅威ではなくなることで、中国がより繁栄するであろうと推定し、それを必然的なものと捉えていた」と説明します。
この関与政策に関して、「その必然性の時代は終わり、ニクソン大統領が望んだ類の変化は、中国には訪れなかった」「中国の発展が自由と民主主義をもたらすという歴代政治指導者たちの理論は真実といえるのか?」「今の米中関係はWin-Winであるといえるのか?」と、ポンペオ長官は問いかけます。
「我々が今行動を起こさなければ、我々が苦心して築き上げてきた自由、そして法と秩序は中国共産党によって摩耗してゆく。今我々が屈従すれば、子孫の世代には自由な世界に対する根本的な挑戦者たる中国共産党のなすがままになってしまう」
ポンペオ国務長官の結論からは、今後米中間の対立は単なる貿易や金融、知的財産などといった領域に限定されたものではなく、価値観の異なる中国との全面的な対決、すなわち冷戦期のイデオロギー対立に類似した世界を見越していると理解できます。