1億150万年前の地層で生き延びていた微生物(微生物のDNAを蛍光色素で染色した画像、提供JAMSTEC)

1億年前からずっと生きていた微生物を海底下の地層で発見!

海より深いところに潜んでいた命

深い海の底のさらに下、泥が積み重なった地層の中にも生き物はいます。海底下には、肉眼では見えない微生物がたくさんいて、地下生命圏が広がっているのです。では、1億年前に堆積した地層の中にも微生物はいるでしょうか?

いたとしても、死んで化石になっている、と予想した人も多いのではないのでしょうか。ところが、1億150万年前に堆積した海底下の堆積物を採取し、微生物のエサとなる物質を染み込ませて培養したところ、なんと、そのエサを食べ増殖した微生物がいたのです!

微生物を発見したのは、JAMSTEC超先鋭研究開発部門高知コア研究所 地球微生物学研究グループ主任研究員の諸野祐樹(もろの・ゆうき)さんです。微生物はどこから見つかったのか、ずっとそこにいたのか、なぜエサを食べたとわかるのか、聞いてみましょう。

「地球上で最もきれいな海」の底に微生物が

──1億年の眠りから目覚めた微生物は、どこの海底下にいたのでしょうか。

諸野 陸から遠く離れた南太平洋の真ん中、南太平洋環流の内側です。そこは、地球上で最もきれいな海として知られています。

環流とは、大きな円を描くように流れている海流のことです。その海流によって、陸から運ばれてくる栄養塩の供給が遮られてしまうため、還流の内側は植物プランクトンによる有機物の生産量が低く、海水の透明度が高くなるのです。

今回の研究で使用した堆積物を採取した掘削地点のうち、6点(赤点)は南太平洋環流の内側、1点(黒点)は外側にある

──なぜ、南太平洋環流域の海底下を調べたのですか。

諸野 古くは、海底下に生き物はいないと考えられていました。やがて、浅いところには微生物がいることがわかってきました。しかし、深いところを調べる方法がなく、海底下深くにも生き物がいるかどうかはわかっていませんでした。

海底下生命の研究が本格的に始まったのが、1980年代後半です。そして1990年代になると、海底下の奥深くにも微生物が存在していることが明らかになってきました。

しかしこれまで調べてきたのは、主に陸に近い場所でした。陸に近い海には陸から栄養塩が多く運ばれてくるため、植物プランクトンによる有機物の生産量が高く、それを食べる動物プランクトンもたくさんいます。

海底下の堆積物はプランクトンの排せつ物や死骸などが降り積もったものですから、陸に近い海底下の堆積物には微生物のエサになる有機物が多く含まれています。

一方、植物プランクトンによる有機物の生産量が低い南太平洋環流内側の堆積物には、有機物は少ししか含まれていません。そのような超低栄養の環境でも微生物はいるのか? その微生物は生きているのだろうか? それを明らかにするために、南太平洋環流域の海底下を調べたのです。