「高プロ」も愛国教育も、支配エリートの新「帝国主義」への布石か?

反緊縮左派が試されるとき(4)
松尾 匡 プロフィール

TPPにこだわった理由

こうしたことを念頭におくと、興味深い事実があります。

なぜ安倍政権はアメリカが入らないTPPにこだわったのでしょうか。アメリカが入らないTPPは日本が先進国として突出することになります。そのことは何を意味するのでしょうか。

 

内閣官房のTPP政府対策本部のサイトを見ると、進出企業が現地政府を訴えることができるようにするISDS条項について、こんなふうに書いています。

「海外で活躍している日系企業が、進出先国の協定に反する規制やその運用により損害を被った際に、その投資を保護するために有効な手段の一つになる」

つまり、日本企業の進出先のアジアの国で、政権が変わったり自治体が独自政策をとったりして、労働保護基準や環境保護基準を強化したり、開発を禁止したりして、進出企業が当初より損をする動きがおこったら、これを武器にして恫喝してやろうというわけです。

安倍政権がプーチンに入れ込む理由

この上に、自衛隊を海外派兵できるようにする動きが重なると何が見えるでしょうか。日本企業が東南アジアにたくさん進出するのは、低賃金で現地の人々を搾取するためです。

調子に乗っていると反発を買って、当然、激しい労働運動やテロなどで進出企業やその駐在役員が危険にさらされる事件は起こるでしょう。はなはだしくは、政権が転覆して日本企業が国有化される事態が起こるかもしれません。

そのとき、「日本人の生命と財産を守る」と称して、最終的には自衛隊を派遣して実力で守るということではないでしょうか。

自衛隊の海外派遣の意図とは?(photo by iStock)

その上もっと憂慮すべきことがあります。東南アジアに対して企業が進出しているのは、中国も韓国も同じです。

よって、こうした協定や、とどのつまりは武力によって、自国企業の便宜を図ろうという動きは、先方からも同様に起こるでしょう。そうすると、要は「ショバ争い」が起こります

そんな中で、日本企業を標的にしたテロや革命などが起こったとき、日本の支配層が、「背後に中国の陰謀がある」などと喧伝することになったならば、自衛隊の実力介入に世論の支持がつくかもしれません。

それに対抗して中国も出張ってきたら、悪くすると本当に戦争までいくかもしれません

そう考えると、多くの西側の国々がロシアのプーチン政権に冷たい中で、安倍さんが、領土問題進展の見込みが薄いのに一生懸命プーチンさんに入れ込むのがなぜかがわかります。

これから東南アジアで中国帝国主義と覇を争う野望があると思えば、北方を安全にしておくという意味があるのだと思います。

マスコミは領土問題で成果が得られないことをさんざん叩きましたが、日本の支配層にとっては大いに成果が得られているのだと思います。

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