photo by gettyimages

「高プロ」も愛国教育も、支配エリートの新「帝国主義」への布石か?

反緊縮左派が試されるとき(4)
連続の在任期間が歴代最長となった安倍政権。8年にわたって行われてきた政策の多くが、円高を背景とした現代版「帝国主義」へ向かっている、と経済学者・松尾匡氏は分析します。国政を担うエリートたちが思い描くビジョンと、その問題点とは? 経済の視点から新しい左派を考える連載、第4回です。

第1回:私利私欲を度外視した公共的理性が、唯一無二の生命を犠牲にする
第2回:新自由主義による悲惨な現実を解決できるのは、左派ポピュリズムです
第3回:
左派ポピュリズムが日本で望まれ、「反緊縮」を装う新維新が躍進?

 

東南アジアへの企業進出が急増

安倍政権ができてから、円高で無理やり追い立てられることはなくなったはずなのに、東南アジアに対する企業の進出が急増しています。

下記図表1の左のグラフは、日本から東南アジアへの、工場などを作るための年々の直接投資から回収分を引いたネットの直接投資の推移を、右のグラフは、日本から直接投資された分の工場などの総額(残高)の推移を示したものです。

左のグラフを見ると特に、円高が進行した2011年は特別として、安倍政権成立後の2013年にジャンプして増えていることがわかります。

図表1:東南アジアへの直接投資の増大 ジェトロ「直接投資統計」https://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/fdi.html

もちろん日本からの対外直接投資は世界中に向けて増えているのですが、2019年分のネットの直接投資で見ると、中国へは約144億ドルだったのに対して、アセアン4(タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン)にはそれを上回る約159億ドル、シンガポール一国に対してでも約157億ドルでした。

2019年末時点での残高で見ても、アセアン4(約1513億ドル)は、中国(約1303億ドル)よりも多くなっています(2016年から抜いています)。

これからは円高傾向が自然に

東南アジアにかぎらず、この間、企業の海外進出はどんどん進んできました。その結果、海外子会社からの利潤の送金が年々高まっています。これは将来的にも増える一方になるでしょう。

図表2は日本に送られてくる直接投資収益の推移を示したグラフですが、安倍政権成立後跳ね上がって伸びていることがわかります。2019年は10.6兆円に達していますが、この年の経常黒字は20.1兆円です。半分は直接投資収益なのです!


 
図表2:日本に送られる対外直接投資収益の推移 財務省「国際収支状況 III.第一次所得収支の推移」
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm

これは外貨で送金されるので、日本では円に換えなければなりません。ということは、円高になります。つまり日本経済には長期的に通奏低音として円高圧力がかかり続けるということです。

当面見通せる将来は、一生懸命政策的に抑えることのないかぎり、円高傾向が自然であると見込まれます。