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「言いたいことも言えない、窮屈な世の中」という言葉に隠されたズルさ

ついつい口にしていませんか…?

大阪府知事の会見に驚いた

冒頭から宣伝になってしまい大変恐縮だが、2020年8月に『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』(WAVE出版)という書籍を刊行した。

 

「あなたのためを思って言っているんだよ」との言葉で理不尽な提案を押し付けられたり、こちらが正当な抗議をしたら「そんな言い方じゃ聞いてもらえないよ」などと言われたりした経験はないだろうか。本書ではこうした「うまく言い返せないが、不当な気がしてモヤモヤする言葉」(ずるい言葉)の各類型に対して、どのように考えたらよいか、場合によってはどのように対処したらよいかを考えた本だ。

すべての編集作業を終えてあとは発売を待つだけとなった時、まさに本書でとりあげたのと同じ類型に含まれる発言を報道で耳にしたので、この発言を足がかりにスピンオフ企画『大人版「ずるい言葉」』をやってみたい。少々お付き合いください。

大阪府知事が新型コロナウィルス対策の一環としてポピドンヨードを含有するうがい薬について発言したのを耳にした人は多いだろう。本稿ではこの話題をとりあげる。ただし、その科学的有効性や、医学的知見を政治に活かす手法の是非とは異なる点に着目したい。

ポピドンヨードに関する発表当日にうがい薬の買い占めなどの混乱が起こったことをふまえ、翌日の会見で記者に批判的な質問をされた府知事は「僕がそういうふうに感じたところをしゃべったら、それは間違いだとか言われたら、僕自身はこれ、言いたいことも言えなくなる」と述べた。

これには驚いた。というのも、「(言いたいことが)言えなくなる」という発言は、これまでパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに関して言われることが多く、まさか新型コロナウィルスをめぐってこの発言に出会うとは思わなかったからだ。

上述の拙著でも、女性教師が容姿のおかげで得をしているとの判断を男性教員が発言するエピソードを設定し、その分析をおこなっている。「言えなくなる」の用例としては、府知事の発言は新しいタイプのものだと感じた。