育児は恋愛と同じ

――すみれさんの記憶の中でお母さんに「〜〜しなさい」って言われたことはなかったんですか?

すみれ バイオリンの練習していて、音を外すと声は飛んできたよね(笑)。

真理 「勉強しなさい」とは言わなかったけれど、日常にいろいろ仕掛けをしてるわけ。階段にカードが置いてある、とか、ホームパーティする、みたいな。でもこっちが仕掛けていることが相手にバレると白けるじゃない? 恋愛と同じで。種明かしをしたら何も面白くない。本当はこちらがデートに誘うように仕掛けているのに、男性は自分から誘ったと思っている、みたいなほうがいいでしょ(笑)。自分で選んだと思わないと、達成感はないからね。我慢できずに「〜〜しなさい」「〜〜大学に行きなさい」って言っちゃったら、「あらかじめお膳立てされてるのか」ってやる気なくすよね。

すみれ でもそういえば、「早くしなさい」っていうフレーズは、550億回くらい聞いた(笑)。

真理 「早くしなさい」っていうのは、「早くごはん食べて学校行きなさい」「早く歯磨きして寝なさい」とかじゃないからね(笑)。「時間の無駄を削りなさい」という意味。

すみれ だから「単語を覚える」とか「この曲のこのパッセージを仕上げる」とか、何でも効率よく5分で終えるクセはついたよね。「早くする」というのには2つ意味があって。マクロレベルで言うと、1つのタスクにはたとえば5分以上時間をかけない、ってことなんだけど、ミクロレベルで言うと、たとえば英語の長文に分からない単語が1つあったとしても、いちいちそこにこだわって辞書で調べてノートに意味を書いて、みたいなことはしないということ。「しょうもないことに時間をかけない」「1つのタスクに時間をかけない」という習慣をつけたことは、その後のすべてにおいて役立ってるので感謝してる。

幼い頃からバイオリンを習っていたすみれさん。ハーバードののちジュリアード音楽院に合格。写真は卒業式にて 写真提供/廣津留真理