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なぜ中国に勝てないのか?日本が「ベンチャー大国」になれない本当のワケ

失敗を「悪」と考えるな
永井 竜之介 プロフィール

ロールモデルはジャック・マー

しかし、国による環境づくりだけで、中国がベンチャー大国になれたと思うのは大きな間違いだ。

中国経済を牽引する二強とも言える、アリババは1999年創業、テンセントは1998年創業であり、国のバックアップ体制が整うよりもずっと以前に、自力で急成長を遂げた。国のバックアップは、自然発生したベンチャー業界の活性化を加速させているもの、という位置づけが適切だろう。

だから、たとえ中国と同じ仕組みがあったとしても、それだけで日本がベンチャー大国になることはとても考えにくい。ベンチャー大国になるためには、輝かしいロールモデルの存在と、「失敗を悪としない」価値観の浸透が必要になるからだ。

長い間、中国経済は、国の所有する国営企業によって支配されていた。そして、国営企業の人材には、高い学歴と強力なコネクションが求められた。その固定化された階層と成功ルートを打ち破ったのが、2000年前後から続々と現れてきたITベンチャーの存在だった。

ベンチャー起業家のなかでも、新たなロールモデルとして象徴的存在になったのが、アリババの創業者であるジャック・マー氏だ。彼は、大学受験にも就職活動にも失敗したし、強力な人脈も持っていなかった。それでも、大学の英語講師という立場から起業し、わずか十数年で中国ビジネスのトップ、世界ビジネスのトップ10へ成り上がった。

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中国人の誰もが、「チャイニーズドリーム」を叶えたジャック・マー氏の存在を知っている。そして、彼をリスペクトしている。中国において、学歴や人脈はいまでももちろん重要だが、ベンチャーが活躍する社会になったことで、誰もが、どこからでも、どんな方法でも、成功を狙えるようになった。成功の種類も、成功へのルートも、一通りではなくなったのである。

夢を追いかけるには、その夢に近い成功をすでに実現させたロールモデルの存在が重要だ。ジャック・マー氏というロールモデルが存在することで、フォロワーとして大勢の起業家が生まれ、ベンチャー大国として活性化を続けている。