「若者世代への讃歌を作りたかった」と語るオリヴィア・ワイルド(※1)。米TVドラマ『The O.C.』や『Dr. HOUSE』で人気女優に上りつめた彼女が2019年に初めてメガホンをとった映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(現在公開中)は、数々の映画賞に輝き、世界中の観客と批評家から大絶賛を受けた。オリヴィアは本作で監督としての手腕を買われ、マーベル映画の「スパイダーウーマン」の作品の監督にも大抜擢を受けた、という噂もあるほど。

オリヴィア・ワイルド監督

90年代にアメリカの高校と大学に通った筆者は、この映画を観て腹の底から笑い、そして心の底から感動してしまった。それは、この作品がこれまでのティーン映画に刷り込まれたパラダイムを一掃していたからである。

「青春映画」の既成概念を壊した

映画のタイトルの「book smart」とは、“本ばかり読んで頭でっかちな知識を携えているけれども、実体験や知恵を伴わない人”という意味があり、「street smart(ストリートで知恵や知識をつけた人)」の対義語だ。

モリー(ビーニー・フェルドスタイン)はイェール大学、エイミー(ケイトリン・デヴァー)はコロンビア大学と、主人公の女の子たちは2人はどちらもアイビーリーグへの進学が決まっている。彼女たち、特にモリーは、恋愛や遊びにうつつを抜かすクラスメートたちを小バカにし、名門大学に入学するために猛烈に勉強し、高校生活を勉強に捧げたことを誇らしく感じている。

『ブックマート 卒業前夜のパーティーデビュー』より

だが卒業する日の前日に、チャラい奴だと思いこんでいた副生徒会長、顔が良いだけのヤリマンだと見下していた女の子、バカなスケボー少年だと思っていた男の子など周りの子たちも皆、ハーバード大やスタンフォード大などの超一流校に合格していたことが発覚する。

「遊び回っていた奴らがなぜ……!?」。ショックを受けたモリーとエイミーは失ってしまった高校生活を一晩で取り戻すべく、卒業パーティーに乗り込むことを思いたつ。それなのに、行く先々のパーティーで想定外の出来事が起こり、なかなかお目当てのパーティーまでたどり着けない……。

という爆笑青春コメディなのだが、登場人物たちの描かれ方が、これまでのティーン映画とまったく違うことに筆者は驚いた。

本作に登場するLAに住む高校生たちは2000年代前半に生まれた、いわゆる「ジェネレーションZ」だ。グレタ・トゥーンベリさんを始めとする彼らの世代は私たち大人よりもずっと環境問題、政治、フェミニズムに強い関心を抱いているといわれている。

ジェネレーションZの価値観を色濃く反映する本作を通して、同世代に起きている変化を紐解いていきたい。