アポロ計画で月に残された「あるもの」に生じた謎の異変

NASA発の「月」の最新研究
熊谷 玲美 プロフィール

今なお現役、アポロ計画の実験装置

この壮大かつ繊細な実験は、実はアポロ計画と深い関係がある。

1969年、人類で初めて月面に降り立ったアポロ11号の宇宙飛行士は、「リトロリフレクター」という装置を月面に設置した。鏡で光を反射させると、来た方向とは違う方向に進む。このリトロリフレクターは、どの方向から来た光でも、元の方向に返す特殊な反射鏡だ。

月面に設置されたリトロリフレクター(Image credit: NASA)

これを使うと、地球と月の正確な距離が測定できる。光の往復にかかった時間に、光の速さ(秒速約30万キロメートル)をかけるだけと、とても簡単だ。

リトロリフレクターは、その後のアポロ14号と15号や、ソ連の月面車ルノホート※5でも設置された。以来50年以上にわたって、レーザーを使った月の距離の計測「月レーザー測距」実験に使われている。アポロ計画で月面に設置された実験装置のなかで、今でも唯一現役だ。

月面のリトロリフレクターの位置。Aがアポロ、Lがルノホート(Image credit: NASA)

ところが最近になって、リトロリフレクターの反射が弱くなった。小さな隕石衝突で生じたダストに覆われてしまったせいらしいが、確かめに行くこともできない。

そこで新品のリトロリフレクターをルナー・リコネサンス・オービターにのせて、月面のリトロリフレクターと反射能力の違いを調べることにした。その違いから不具合の原因がわかれば、データ解析の工夫などで対応できる。

不具合の原因はまだ不明だが、リトロリフレクターを使った距離測定を続けるため、今後もデータを集めていく予定だ。

 

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