SDGsはグローバルな共通目標だけれど、国や地域によって課題は違います。それは経済的、社会的な格差だけでなく、伝統、文化、風土といった暮らしの環境にも影響されるもの。日本にフィットする持続可能な社会とは? 日本人の私たちができることは? 未来のことを考えながら今を生きる人たちに話を聞きました。

今回、お話を伺ったのは、パーマカルチャーデザイナーの四井真治さん。暮らしに自然の循環の仕組みを取り入れれば、その土地はより豊かになる。そんな四井さんの自然を見本にした生き方は、さまざまな可能性に満ちていました。

生きるということは究極の持続可能な仕組み

「パーマカルチャー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。70年代にオーストラリアでビル・モリソンが体系化した、持続可能な生活システムをつくり出すためのデザイン体系のことである。ネーミングには、パーマネント(永久の)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)の意味が含まれている。そんなパーマカルチャーを長年学んで実践しながら、日本の風土に合わせて解釈して発展させてきた人がいる。パーマカルチャーデザイナーの四井真治さんだ。

パーマカルチャーデザイナーとして〈Soil Design〉を主宰する四井真治さん一家の住まい。暮らしの循環を考え、日本の文化や風土を大切にする。

四井真治(よつい・しんじ)
信州大学農学部森林科学科にて農学研究科修士課程修了。緑化会社や農業経営、有機肥料会社勤務を経て、2001年にソイルデザインを立ち上げる。愛知万博のガーデンのデザインや長崎県五島列島の限界集落再生プロジェクトなどに携わる。日本文化の継承を取り入れた暮らしの仕組みを提案するパーマカルチャーデザイナーとして国内外で活動する。soildesign.jp

四井さんは、八ヶ岳南麓の雑木林に佇む一軒家で、妻の千里さんと2人の息子の4人家族でできる持続可能な暮らしを研究しながら築き上げてきた。四井家の毎日は忙しい。竹藪を開墾して畑を作り、野菜やハーブを育てて収穫し、料理をする。

50年間放置されて竹林となっていた農地を、家族4人で3年かけて開墾。今は日当たりのよい広々とした畑になっている。野菜やハーブ、果樹などを植え、自家製堆肥で無農薬栽培。妻の千里さんは、ハーブや花を摘んでサラダやチンキを作る。
時間があるときに、軒先のかまどに火を起こし、調理するのは楽しみの一つ。
木漏れ日を眺めながらぼんやりしていると、あっという間に日が暮れてしまいそうなほど心地よい。

時間があれば庭先のかまどで米を炊く。煮炊きに使った薪は灰となり、畑にまけばミネラルとなる。台所から出たごみや排泄物は堆肥化し、土に還る。ないものは木や鉄で作る。暮らすことが土を作り、生きものを増やし、自然の仕組みと有機的につながっていく。生きるということは究極の持続可能な仕組み

住まいを案内してくれる四井さん。

「日常の暮らしが楽しくて、毎日があっという間。自分たちの敷地にいるのがいちばん」

自然や昔の人の暮らしから学んだ知恵を取り入れた暮らしを実践するのに、自分の手を動かして作ったさまざまな仕組みは欠かせない。

台所のバイオジオフィルターにいたシマミミズ。ミミズは種類が多く、その性質によって住む場所が違う。

例えば台所の排水は、濾過用の軽石や、さまざまな植物を配置し、排水を浄化させる手製のバイオジオフィルターを通してきれいにし、その先に作ったビオトープの池に流す。この池を訪れる生物の多様性を観察するだけでも面白い。また家の外には鶏小屋と堆肥小屋を作り、生ごみはすべてそこで落ち葉と混ぜ合わせて堆肥にし、畑に利用している。臭いそうかと思いきや、堆肥小屋はほぼ無臭。日なたのような、土のいい香りがするだけ。

その日に使う野菜を畑で収穫。千里さんがサラダを作って、エディブルフラワーを飾る。

窒素と炭素のバランスが合っていれば、腐敗せずに発酵するから臭わないんです。黄金バランスは、自然を見習えばいい。自然の仕組みには、あらゆることの答えがあるんです

四井家の「本日のサラダ」。

この堆肥を撒いた畑の野菜で、四井家の食卓は賄われている。化学肥料も農薬も不使用。

「化学肥料に頼ると主要成分のみが残り、土の栄養バランスや微生物相が崩れてしまう。それによって病害虫が発生し、それを抑えるために農薬が必要になる。悪循環ですね」