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玉木雄一郎が語る、自民党が受け継がなかった「大平正芳の精神」の正体

「田園都市構想」「楕円の哲学」…

戦後日本の総理大臣たちの暗闘を描いた伝説的名作劇画『歴史劇画 大宰相』(さいとう・たかを=著、戸川猪佐武=原作)が講談社文庫から順次刊行されている。近刊の第8巻が扱うのは「鈍牛」「アーウー宰相」の異名をとった大平正芳元首相。以下、大平と同じ香川県の出身の国民民主党代表・玉木雄一郎氏による同書の解説を掲載する。

胃が痛くなるような神経戦

「江戸を兵火にさらすのはしのびない……勝海舟と西郷隆盛のつもりで、話を詰めようじゃないか」

本書には、福田赳夫元総理が大平正芳総理に、そう迫る場面があります。

自民党分裂という最悪の結果を避けるため、お互い譲歩しようという提案です。何を譲るのか、どんな形で折り合いをつけるのか。政治の世界は、大なり小なり、これと同じことをくり返しているのだと思います。本書に描かれた「四十日抗争」の場面を読むうち、何度も胃が痛くなりました。

大平正芳氏(1978年)〔PHOTO〕Gettyimages
 

主流派と反主流派の対立が深まる中、大平正芳、福田赳夫、三木武夫、中曽根康弘の各氏ら派閥の領袖の意見を集約して事態を収拾するため、自民党の重鎮、西村英一副総裁が調整役に立ちます。ところが、調整役に全権を委任するかどうかでまず一悶着ある。血気盛んな派閥の若手から「大平に(総選挙に負けた)責任を取らせろ」と突き上げられるので、領袖らは個人の考えだけでは妥協できません。凄まじい神経戦です。

議論は堂々めぐりで終着点を見いだせないまま本会議に突入、大平・福田の両氏による決選投票の末、わずか17票差で大平氏が辛くも勝ちました。同じ党から二人の首班指名者が出るのは前代未聞です。