伊藤理佐さんの漫画『おいピータン!!』は、主人公の「とある事情」により『おいおいピータン!!』とタイトルを変えはしているものの、「Kiss」で20年以上連載が続く人気漫画。手塚治虫短編賞も受賞している傑作だ。生きるためになくてはならない「食べる」を中心に、人生のあるあるを見事に描き出している。ムカッとすることも、うなずきながら読みつつブハッと笑って、なんだかスッキリしてしまうのである。

そんな作品からランダムに選んで無料試し読みをご紹介しつつ、そこに描かれた人間模様を考察する連載「おいピータン!!人間学」。今回のテーマは「故郷の味」だ。思わず涙腺がゆるんでしまうような「思い出のスイッチ」、あなたにとっては何だろうか。

マンガ/伊藤理佐 文/FRaU編集部

お盆に帰省できなかった夏

お盆の時期でも、コロナ感染拡大を防ぐために帰省はできなかったという人も多いことだろう。そんな方にお届けしたいのが、今回紹介する『おいピータン!!』13巻第1話の「おひさしぶり」だ。読むと、自分の故郷の味って何だろう……そんなことに思いを馳せたくなる。

当然ながら、「故郷の味」とはそれぞれの家庭で異なる。
FRaUwebで「本音の置き場所」を連載しているバービーさんは、筋子おにぎりが「故郷の味」のようだ。記事によれば、学生時代、おにぎりを交換こして食べると「かなちゃん(編集部注・バービーさんの本名)ちのおにぎりべちょべちょ、と言われた」とのこと。これでもかというくらいぎゅうぎゅうに握ったまん丸のおにぎりに筋子の汁もにじんでいて、そこに海苔がまんまるとついていたらしい。初めて上京する時に母親が持たせてくれたのもやはりこの筋子おにぎりで、飛行機で泣きながら食べたと書かれている。

「思い出のおにぎり」を聞いたら、きっと形も具もいろんなものが出てくるはず Photo by iStock

たしかに、「故郷の味」は特別な味なのだけれど、誰が食べても必ずしも美味しいものとは限らないかもしれない。

筆者の場合、小学生くらいの頃、ニンジンをすりおろして炒めたものにケチャップを入れてスパゲティ(パスタというものではない)に和えた「ナポリタンに見せかけて違う麺」が毎日大量にお弁当に入っていた。「げ、またこれかあ」と思って当時は食べていたが、ネットもない時代、料理が得意ではない母が必死に作ったのだなあとちょっと胸が温かくなる。ちなみに母の好みでさやいんげんの味噌汁が多く、煮すぎて緑色が茶色っぽくなる前のほどよく煮えた状態で食べるために、急いで味噌汁を食べていたものだ。

砂肝の塩焼きも筆者にとってはセンチメンタルな味だ。9年前に他界した父が大好きで、おかげで筆者もそういう酒のつまみが大好きな子になった。今、家で塩してグリルで焼いて食べていると、シャツ一枚の姿でコリコリ音を立てて嬉しそうに食べていた父の姿が浮かんでくる。そんな風に、誰にとっても、なにかしら思い出のある料理というのはきっとあるだろう。

今回の『おいピータン!!』では、主人公の大森さんが登場(主人公なのに毎回は出てこないのだ)。大森さんは美味しいものを心から愛する料理上手なので、どんな「故郷の味」なのか是非注目して欲しい。
料理が思い出させてくれるものの「料理を超えた価値」を、しみじみ感じることができるはずだ。