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「今の分裂したアメリカは1965年につくられた」とはどういうことか

問われる「未完のアメリカ」の進化

「『未完』のアメリカを進化させる」

「常に現在進行形である『未完』のアメリカを進化させるために、ジョン・ルイス投票権法を実現させよう!」

バラク・オバマ前大統領は、ジョン・ルイス下院議員の追悼の中でこう訴えた。2020年7月30日、ジョージア州アトランタのエベネザー・バプテスト教会で開かれたルイス議員の葬儀の席でのことだ。

ジョン・ルイス下院議員の追悼式でスピーチするオバマ氏〔PHOTO〕gettyimages

追悼の中でオバマは、公民権運動が激化した60年代から続くジョン・ルイスの熱意ある行動を讃えた。その彼の精神を引き継ぎ、「未完のアメリカ」を進化させていくことの必要性を説いた。とりわけ、黒人の投票権の確保に尽力したルイスの意志にかなうよう、新たな投票権法として「ジョン・ルイス投票権法」の樹立を提案した。

というのも、前回触れたルイスが死力を尽くして制定にこぎつけた65年投票権法は、「シェルビー判決」と呼ばれる2013年の最高裁判決によって、事実上、無効化されてしまったからだ。その判決が出て以後、ルイスは改めて投票権の確保に尽力しなければならなくなった。彼にしてみれば、人生の終盤に差し掛かったところで再び時計の針を戻されるような事態だった。だが、それほどまでに公民権運動に触発されて生まれた保守派の反撃が執拗であったということだ。保守は保守で50年かけて昔日の南部の復活を夢見ていた。

 

興味深いことに、BLM(Black Lives Matter)運動が始まったのも、シェルビー判決の出た2013年であり、見事に符合している。トランプ政権が誕生する2017年を待たずに、オバマ政権2期目の最初の年にはすでに「60年代の対立」の再演は始まっていた。

であれば、前回触れたポートランドへのDHS(国土安全保障省)の部隊の派遣が、セルマ行進を血の日曜日事件へと変えたアラバマ州兵の派遣とダブって見えるのもおかしくはない。セルマ行進の鎮圧に州兵の出動を命じたジョージ・ウォレス州知事の姿をトランプ大統領に重ねる議論/批判も、党派を超えて出始めている。

オバマもルイスの追悼演説の中で、この白人優位主義の民主党員のジョージ・ウォレスのことに触れていた。それゆえ「未完のアメリカ」の前進を問わずにはいられない。その意味で、ジョージ・フロイド事件を発端にしたBLM運動の盛り上がりのさなかにジョン・ルイスが亡くなったことはあまりにも象徴的であった。

日本のように、投票日が近づけば自動的に投票用紙が郵送されて各家庭に届くようなシステムとは違い、アメリカでは、まず有権者は、その投票権を行使するために「登録」をしなければならない。そのため、黒人の投票を阻もうと思うならば、この「登録」の段階で何らかの障害を設ければよい。

よくもまぁそんな姑息なことを、と呆れてしまうような妨害行為が南部では平然となされてきた。そのような妨害行為を阻止するために、「投票行為の変更」について連邦政府による審査を必要とする制度をもたらしたのが65年の投票権法だった。