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すべては創業者の死からはじまった…「ニチイ学館MBO」衝撃の顛末

投資家とステークホルダーが置き去りに…

介護大手「ニチイ学館」のMBO(経営陣が参加する買収)が、8月17日に成立、近く上場廃止となる。

ニチイ学館が、米投資ファンドのベインキャピタルと組んで、MBOを実施すると発表したのは5月8日。

TOB(株式公開買い付け)期間は、3度延長され、7月31日にはTOB価格が1670円に引き上げられ、大株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの同意も得て、成立は確実視された。

ニチイ学館のウェブサイトより
 

しかし、最終日の早朝、日経ビジネスオンラインが「1株2000円のTOB価格を提示するファンド」を公表。同日、株価はTOB価格を超えて終了。

翌日、1748円の年初来高値を付けたが、ニチイ学館が午前11時過ぎ、「82%の応募が集まった」としてMBO成立を表明、株価は沈静化し、終値は1664円だった。

MBO成立までの顛末を振り返ってみよう。

すべては会長の死からはじまった

すべては、昨年9月、創業者の寺田明彦氏が、会長のまま、83歳で亡くなったことから始まった。三度の結婚を経験した明彦氏は、親族に約200億円の株式を残した。相続税を支払うには持ち株を処分するしかないが、市場で売却すれば株価は暴落、かつ大株主としての地位も失う。

その相続対策としてMBOを打ち出したのがベインキャピタルだった。

世界に約1000人の社員を抱えるプライベートエクイティファンドで、84年の設立以来、約1050億ドル(約11兆5500億円)の資産を運用してきた。日本代表の杉本勇次氏は、ニチイ学館の社外取締役である。

そのスキームは、ベインキャピタルが約270億円を出資して受け皿会社を設立。同社が、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、野村キャピタル・インベストメントから986億円を上限として借り入れ、決済資金とする。TOB価格は、5月7日の終値価格に約37%のプレミアムを乗せた1株1500円だった。

 

もともとMBOは、少数株主の権利を、大株主が金銭で奪い、収奪するもの。「締め出し」を意味するスクイーズ・アウトと呼ばれるが、ニチイ学館は露骨だった。

公開買付者は、社外取締役のファンドなので中立性に疑義がある。しかも親族は相続税の支払いの後、公開買付による手取金の一部を再投資して大株主の座を保持するのだから自己都合というしかない。

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