「楽天モバイル」の店頭(Photo by gettyimages)

総務省「携帯料金値下げの鬼」が、この秋に企んでいること

乗り換え手数料の廃止にまい進

NTTドコモなど携帯大手3社の2020年第1四半期決算が全社営業黒字だったことを受け、総務省が秋以降に料金値下げ圧力を強めるとの観測が広まっている。新型コロナウイルス流行下でも利益を上げられる財務体質が、かねてから携帯料金の値下げを進めてきた総務省に口実を与えた格好だ。「値下げの権化」と呼ばれる同省幹部の動きに、携帯大手幹部は戦々恐々としている。

 

携帯大手各社が恐れる男

「コロナで全業種とも散々だったのに、全社1500億円以上の純利益が出ている。ということは、まだ値下げの余地はある」

総務省の電波行政の事務方トップである谷脇康彦総務審議官は周囲にこう漏らし、秋以降、携帯料金のさらなる値下げを進めるよう息巻いているという。

携帯大手3社の第1四半期決算では、コロナによる外出自粛の影響で店頭での端末販売が軒並み減少したものの、本業でのもうけを示す営業利益は前年同期比で増加。純利益を見ても、各社とも「d払い」や「auペイ」などの金融決済サービスやテレワーク需要など携帯電話以外の事業がカバーしたため、ソフトバンク以外は増加した。そのソフトバンクも、前年同期に株式の売却益を計上した反動を差し引けば、実質は横ばいをキープしている。

言うまでもなく、携帯電話事業は国から電波の割り当てを受けている許認可事業だ。今年4月には楽天が新規参入したものの、典型的な規制業界であるため、既存大手が利益を独占する構造は揺るがしがたい。

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こうした業界の構造について、総務省はかねてから「儲けるのは自由だが、消費者に適正に還元しないなら規制で吐き出させる」(幹部)との姿勢をとってきた。今回のコロナ禍で、携帯大手が非通信分野でも利益を出せることがわかった。それならば、もっと料金を下げろという風に考えが傾くのは当然の流れといえる。

その急先鋒が谷脇氏だ。1984年に旧郵政省に入省し、当初は郵便貯金を手掛けたが、ワシントンの在米大使館などでの海外勤務を経て2005年に帰国、情報通信分野の改革に携わるようになった。携帯大手による硬直化した国内市場に疑問を感じたためで、帰国直後には携帯会社が販売代理店に支払う奨励金廃止などの施策を打ち出し、各社の業績が軒並みダウン。「谷脇不況」と恐れられた。