文科省元幹部「裏口入学事件」裁判で見えてきた意外な真相

これは本当に「事件」だったのか
大田 和博

検察お得意の“作文”

Dでの会食翌日に臼井被告を訪ねた佐野被告が、ブランディング事業の制度趣旨について、「東京医大の問い合わせに応じる文科省の担当課の担当者は紹介できない」と申し出たことは前述した。

それでも検察は「佐野被告は、今後は谷口被告を介して東京医大側に対する助言・指導を行うことにした」との一文を冒陳に挿入した。その背景には5月31日から6月8日にかけて佐野、臼井、谷口被告の間で交わされた、事業計画書など提出書類をめぐるやり取りが存在する。

 

3被告の冒陳によると、書類の提出期限を約1週間後に控えた5月31日、臼井被告は佐野被告に「ブランディング事業の書類ができたので見てもらいたい」とのメールを送った。だが既に「書類を見ることはできない」と伝えていた佐野被告はこれを黙殺。そこで臼井被告は同日、谷口被告に面会して「佐野氏に渡して欲しい」と話し、事業計画書案を含む書類一式を渡した。佐野被告はこの臼井、谷口両被告の面会に一切関与していない。

ところが検察によると、臼井被告のメールを黙殺した佐野被告は「谷口被告を介して東京医大の事業計画書案を受領することとし、臼井被告から同案を受領するよう谷口被告に依頼した」とされている。谷口被告に連絡した人物が、なぜか臼井被告から佐野被告にすり替わっているのだ。

被告側の冒陳に戻ろう。6月1日、谷口被告は臼井被告から前日渡された事業計画書案を持参して佐野被告の執務室を訪れ、「臼井氏から『佐野氏に見てもらって欲しい』と頼まれた」と伝えた。佐野被告は「自分は立場上関与できない。臼井氏の依頼は受けられない」と断り、谷口被告は「TMC内で検討する」と答えて、同案を佐野被告に見せることなく帰社。

同日中に同案をPDF化し、社員2人とともに検討した。社員は各々、事業計画書案に手書きでコメントを加え、その内容を谷口被告に伝えた。

谷口被告はその後(日時不明)、手書きコメントが加えられた事業計画書案を持参し、執務室で佐野被告と面会する。谷口被告はTMCで同案を検討したことを伝え、「イメージ図が分かり難い」とこぼすと、佐野被告は「イメージ図は分かりやすく書くべき」などと一般論を一言二言話した。だが同被告は同案1枚目の表紙を一瞥した程度で、中身まで読むことはなかった。

6月5日、谷口被告は臼井被告に連絡して都内のホテルで面会。TMCで手直しした事業計画書案を臼井被告に手渡しし、手直しした内容を説明。臼井被告はこれを学内のブランディング事業申請担当者に渡し、担当者は書類を完成させた上で、提出期限前日の7日夜に文科省に提出した。