文科省元幹部「裏口入学事件」裁判で見えてきた意外な真相

これは本当に「事件」だったのか
大田 和博

単なる儀礼的挨拶

検察の恣意的な解釈が最も甚だしいと思われるのは、会食冒頭で3被告が交わした、佐野被告の次男の東京医大再受験に関する会話についてだ。

次男は17年2月の同大入試の一次試験で不合格となり(臼井被告はこれを承知するも不正加点せず)、翌年2月に再受験する意向だった。着席した佐野被告が「またよろしくお願いします」と話すのに対し、「来年は絶対大丈夫だと思いますので」と答える臼井被告。次男の入試成績を記載した書面を佐野被告に手渡して、「もうあと5点、10点欲しい」と話している。

会食冒頭の賑やかな雰囲気の中で交わされているこの会話について、検察は「次男の成績があと5点または10点程度高ければ、合格点に達していなくても、臼井被告が自らの判断による加点で合格させることができる旨伝えた」と認定する一方、佐野被告はこれを明確に否定する。筆者には、3人が共有している話題から会食を始めようとする「方便」としか思えなかった。

 

会食後半にも、佐野被告が次男について「きちっと今度は勉強してやりますので」と言及し、臼井被告が「ぜひぜひ、もううちに予約しておいでになって」などと答えて、谷口被告も帰り際に「そうそう、予約入学」などと爆笑している場面がある。

これについて検察は「ブランディング事業の事業計画書の記載などに関する助言・指導を約束したことを踏まえ、佐野被告はその見返りとして、東京医大の18年度一般入試で次男が一定の得点に達すれば、合格点に達していなくても臼井被告の判断で加点して合格させる旨、再度言及した」と認定。これに対して佐野被告は、冒陳でこう述べる。

「息子によく勉強させます、との趣旨のことは話したが、加点等の入試成績の不正行為をお願いしている場面は全くない。『また頑張りますので、よろしくお願いします』との発言は単なる儀礼的な挨拶で、優遇措置を講じるよう依頼したものではない。臼井被告も1浪中の次男に対する『励まし』の言葉を言っているだけ」

谷口被告も第2回公判の本人尋問で供述する。

「予約という言葉は、医療界では予約診療や予約受付などの形で普通に使われており、臼井被告独特のジョーク。『次男が別の医大に数多く合格しても、うちに来て欲しい』という意味で、入試成績に加点するとの趣旨とは全く思えなかった」

こうしたやり取りを「佐野被告からの贈賄要求」と解釈した検察の姿勢は、“こじ付け”以外の何物でもあるまい。