文科省元幹部「裏口入学事件」裁判で見えてきた意外な真相

これは本当に「事件」だったのか
大田 和博

佐野被告に職権は存在せず

私大研究ブランディング事業は、文科省が16年度から始めた補助金交付事業だ。交付を希望する私大は、研究の実施内容を記載した事業計画書などを提出。外部の有識者からなる選考委員会がこれを審査し、対象校を選定する。文科省内の管轄部署は高等教育局私学部私学助成課で、補助金交付は同局局長の専決事項だ。

「文科省職員は選考委員会の審議内容に関与できず、大臣官房長や科学技術・政策局長に口出しできる余地は一切なく、高等教育局内の決済にも関与できない仕組みになっている」(佐野被告)

 

だが検察の主張はこうだ。

「同事業の前提となる予算案作成や、概算要求などの予算に係る事務のほか、対象校への補助金交付、交付決定取り消し、会計監査などの事務は大臣官房会計課が所管していた。文科省の所掌事務に関する総合調整、国会連絡、広報などを担当する大臣官房は、同事業に関しても、非公表情報を含む各種情報を高等教育局から入手できる権限を持っていた」

これぞ“こじ付け”以外の何物でもあるまい。検察の主張は、対象校選定という同事業の本筋に関する職権からおよそ懸け離れている。佐野被告は「官房長、科学技術・政策局長に同事業の支援対象校の選定に関する職権はなく、東京医大が選定されるよう文科省の担当部局に働きかけたこともなければ、事業を選定する第三者委員会に接触したことも一切なかった」と主張する。検察はこれをどう覆そうというのだろうか。