二度の大病を乗り越えた先に、石原慎太郎が見つめる「死」と「生」

生命の危機の狭間で書かれた短編集

二度の生命の危機の間に

―'13年に脳梗塞を発症し回復、今年1月には膵臓がんが発見され、治療を受けていたことを先頃公表されました。

幸いステージ1で発見され、重粒子線治療を受けましてね。現代医学に助けられました。今はまったく不調はありません。先日もPET検査(陽電子放射断層撮影法)を受けましたが、異常は見つかりませんでした。

―新刊『死者との対話』は、その二度の生命の危機の間に書かれた7編を収めた短編集。表題作は、精神病院に入院中の初老の作曲家と大学生の青年が死について哲学的な対話を交わす物語です。

この作品は、心理学者の故・河合隼雄さんがある座談会で語っておられた話にヒントを得て書きました。

若い頃、死期の迫った人の世話をしたという河合さんの印象的な逸話に、私自身がヨットレースに出たりして海で体験した不思議な出来事も活用したつもりです。

 

―表題作以外にも、さまざまな形で死という現実に直面する人々の姿が描かれます。『暴力計画』は、太平洋戦争中にインパール作戦を指揮した牟田口廉也陸軍中将に復讐を試みる男性の物語です。

友人でワコールの創業者である塚本幸一さんは、まさにあの兵団にいて九死に一生を得た人でしたが、若い頃に彼の話を聞いたとき、内容があまりに厳粛なので思わず座り直したのを覚えています。