アナウンサー古舘伊知郎を「作り上げた」10冊の本とは

「本」で振り返る人生

主人公になりきって

僕は生まれも育ちも東京都北区の滝野川ですが、中学は千代田区の学校に越境していました。学校帰りには神田の書店街に立ち寄り、今はもうなくなってしまった書泉ブックマートによく行っていました。

その店の紙のブックカバーがかっこよくて、それ欲しさに本を買っていて、『車輪の下』もその一冊でした。

何の気なしに読んだら、自分でも不思議なくらいはまってしまった。南ドイツの小さな町の森と川、河畔に建つゴシック式の教会といった異国情緒に魅せられ、自分が主人公のハンス・ギーベンラートになって、作品の中をさまよっているような気持ちになりました。

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両親は「勉強しろ」とは言いませんでしたが、僕を他の区の中学に通わせたのは、もちろん高校への進学を考えてのこと。そこには無言のプレッシャーがありました。ところが勉強する気は起こらず、成績はどんどん落ちていく。

自分を神学校の厳しい勉強や生活に苦しむハンスと重ねていたのかもしれません。焦りと混沌の中にいた僕の拠り所となった本です。

 

'77年、テレビ朝日に入社した年にシュツットガルトに出張に行きました。『車輪の下』の舞台の町のすぐ近くです。少年の頃の気持ちがよみがえり、仕事の合間を縫っては、ハンスになりきって、町の中を歩き回りました。

『悪童日記』は出版された'91年に、秋元康さんから薦められて読みました。姉が亡くなったばかりで、生と死について考えていたときだったので、戦争下の世界をしたたかに生き抜く双子の生きざまにぐっときました。