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# 日本経済

最低賃金1000円の据え置きで分かった、日本経済の「厳しすぎる現実」

回復は見込めない

事実上「据え置き」の妥当性

4年にわたり、毎年3%以上引き上げられ、「全国平均1000円以上」(厚生労働省)を目指してきた最低賃金が、ここにきて足踏みしている。

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厚労省の諮問機関である「中央最低賃金審議会」が2020年度の地域別最低賃金の引き上げの目安を示さず、事実上の「据え置き」にすることが決定したのだ。

最低賃金は、左派と右派の間でしばしば論争になる話題だ。左派は、「資本家が労働者を搾取している」との前提で、「最低賃金をどんどん上げろ」と声高に叫ぶ。右派は「そう簡単に賃金を上げてしまったら、企業側が困窮する」と反論する。

 

通常の経済学において、賃金は労使の需給バランスによって決定される。賃金があまり安すぎると企業側の需要超過となり、賃金が高すぎると、企業が提供する働き場が少なくなる。

前者であれば、賃金は次第に上昇し、後者の場合は下がる。いずれにせよ、雇用環境を反映して賃金が決定されるのが、企業側にとっても、労働者側にとっても納得できる理屈だろう。

しかし、実際には最低賃金を巡る争いには、左派のイデオロギーが色濃く反映される。

例えば、民主党政権は最低賃金でつまずいた。2010年、当時の労働状況を鑑みれば最低賃金を引き上げるべきでなかったが、左派政権であることの気負いと経済政策への理解不足から、最低賃金を前年比で2・38%も引き上げてしまったのだ(前年の失業率から計算すれば、無理のない引き上げ率はせいぜい0・4%程度だった)。

こうやって、左派政権が最低賃金についての政策で間違うという事態は、しばしば見受けられる。韓国の文在寅政権も、'18年1月、最低賃金を16・4%も引き上げた。

その結果3・6%だった失業率が、わずか1年後には4・4%まで上昇し、その後も高止まりを続けている。最低賃金が高すぎれば、労働需要が減る。当然の理屈だろう。

ちなみに、'19年7月に行われた参院選における、野党の公約は酷かった。立憲民主党は「5年以内に最低賃金1300円」と掲げ、共産党に至っては、「ただちに1000円、速やかに1500円」と言い切った。何の根拠もない「暴論」と言わざるを得ない。

GDP成長率と失業率の間には、「オークンの法則」という経験則がある。失業は、景気悪化の結果として起こるが、景気がV字回復することが事前にわかっていれば、失業はかなり抑えられる。

 

最初のコロナ禍に見舞われた後、政府は景気のV字回復を目論んでいたが、第2波に見舞われたこともあり、そのような回復はあまり期待できない。

現状では、4-6月期以降に少し回復するが、その後は横ばいの経済状況が続き、回復には時間がかかるというシナリオが有力だ。この状況下で失業率がどのように推移するのかを推定すると、2020年は'19年より2~3%程度悪化し、4・5~5・5%程度になると考えられる。

これほどまでに雇用状況が悪化するということを考えれば、「最低賃金を据え置く」という今回の政府案は、雇用の確保という意味では一定の合理性がある。下手に最低賃金を引き上げ、雇用の悪化を加速させるよりは、遥かにマシだろう。

『週刊現代』2020年8月8日・15日号より

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