元海自特殊部隊員が語る「尖閣諸島、北朝鮮以上の、この国の危機」

最前線の自衛官は国のために死ねるのか
近藤 大介, 伊藤祐靖 プロフィール

幹部候補生の筆記試験をヤマ勘で突破

近藤: でも、大学を出て自衛隊に入隊したら、普通は幹部候補生でしょう? 伊藤さんの場合、二等兵を志願したんですよね。

伊藤: そうです。新宿の自衛官募集事務所に行って、昭和30年代の集団就職のような恰好で入隊しました。私としては「祖国のために命を捧げる」という気持ちでした。

そうしたら予想に反して、虚勢を張っている愚連隊風、目も口も半開きのボーッとした連中、入隊前から軍服を着ているミリタリー・マニアの3種類の人間しかいなかった。こりゃ、とんでもないところへ来ちゃったなと(笑)。

近藤: 前作の『自衛隊失格』を読んでいると、海自の新兵教育というのは、旧日本帝国海軍の山本五十六元帥の影響が、いまだに残っているんですね。「やってみせ言って聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」という山本元帥の名言が貼ってあるとか。

伊藤: そうです。旧海軍の教育というのは、少ない指導部で、徴兵制で集めてきた種々雑多な若者たちを、最低レベルの戦闘行為ができる集団に変えるということが目的だったんです。海自では、いまもその伝統を引き継いでいます。それでも私が入った当初は、脱走者が続出していましたが(笑)。

近藤: 二等兵として入隊して一年後、心機一変、幹部候補生の試験を受けたわけですね。

伊藤: そうです。それで試験会場へ行ったら、文系はこっち、理系はあっちと分けている。「私は日体大なんですが、どちらへ行けばいいのでしょうか?」と聞いたら、試験官も困って、「両方の問題を渡すから好きな方を解け」と言う。

ところが、どちらの試験問題を見ても、問題の意味すら分からない。それで問題を見るのをやめて、解答用紙のマークシートだけを見て、1番から4番のどれを塗り潰そうかと、そればかり考えた。正真正銘のヤマ勘です(笑)。

近藤: でもそれで、合格してしまうわけですよね。やはり運命だったのでしょうね。

私はここ2年ほど、昭和時代に活躍した著名人の人生を、『週刊現代』の「昭和の怪物」というシリーズで書いているんですが、どの人も、まるで「運命」に導かれたように人生が展開していくんですね。そこで思うことは、日本は長年、儒教の影響を受けてきたから、人生は努力によって切り拓かれると教育しますが、どうも違うのではないかと。

古代の中国哲学には、儒教と並び、人はそれぞれ運命を持って存在していると説く道教の教えがあります。哲学的な奥深さで言えば、道教の教えの方が、儒教よりもはるかに上です。

 

伊藤: 運命については私にはよく分かりませんが、ひとつ確実に言えるのは、私はあの時、一生涯の運の9割を使い果たしてしまったということです(笑)。

近藤: そんなことはないですよ。事実、ベストセラー小説を今回、世に出したではないですか。