「大人に認められたい気持ち」を利用

こうしている間も、子どもが狙われている。
どうしたら防げるのか。

小児性犯罪者には、彼ら独特の行動特性や認知の歪みがあると認識しましょう。子どもを守るには、加害者の見ている景色を想像しながら、対策を考えるべきです。予備知識があるだけでも対処行動が取りやすくなります」

そう語るのは、大船榎本クリニック精神保健福祉部長で精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんだ。斉藤さんは、これまでにクリニックをはじめ刑務所や拘置所、警察署で150人以上の小児性犯罪者の治療に携わってきた。著書に「小児性愛」という病 ―それは愛ではない(ブックマン社)がある。

大人と子どもには、身体的、精神的、経済的に圧倒的な力の差があります。子どもは自分が何をされているかわからなかったり、抵抗できないようにコントロールされていたりして、被害を訴え出られないケースも多い。言い替えれば、加害者がそう巧妙に仕向けているのです。警戒心が薄い男の子に興味を示す性犯罪者もいます。男の子だからといって大丈夫とは決して言えません

斉藤さんによれば、加害者からの声かけがよく起きているのは、路上、公園、大型ショッピングモール(トイレ)など。ただし、人が大勢いる場所で堂々と行為に及ぶ加害者は少ない。

公衆トイレは、屋外もショッピングモールなど人がいるところも危険意識を持つべき。photo/iStock

「彼らは子どもの行動パターンをよく観察しています。公園の帰り道(友達と別れて一人になるタイミング)、公衆トイレ、集合住宅の階段のかげも狙われやすい場所。大型ショッピングモールのような人が大勢いるところでも、特にトイレでは子どもを一人にしないことです」

声かけのパターンも巧妙化している。
スマホのアプリやゲームを利用した誘い方も増えています。コロナ禍で、子どもは保護者からゲームをする時間を制限されていることも多い。そこで、子どものゲームをやりたい気持ち、熱中しやすい性質を利用するのです。

加害者は公園などでスマホやゲーム機で遊びながら機会を待ちます。興味を示してきた子に『ゲームやらない?』 『貸してあげようか?』などと誘う。そして、ゲームをしている途中でたまたま画面が消えたりしたら、壊れたと嘘をついて、子どもに罪悪感を抱かせるのです。ここで加害者側がキレると、子どもは混乱して正常な判断ができなくなります。そこで『お母さんにいわれたくなかったらズボンを脱いで下半身の写真を撮らせて、触らせて』と懇願するように絶妙なタイミングで迫る。加害者の常套手段です」

子どもが好きなゲームは誘う材料になりやすい。photo/iStock

そのほか、物をなくした、怪我をした、困っているからいますぐ助けてほしいとSOSを出すパターンもある。緊急事態と言って、子どもが親に連絡する隙を与えないような状況に持ち込むのだ。

近年は、SNSや交流サイトを通じて子どもを誘い出すパターンも増えている。子どもの信頼を得ながら徐々に関係性を深めていくことを『グルーミング』という。巧妙に近づいて写真を撮らせ、それをネタに脅迫し、更なる犯行を重ねる場合もある。

「誘い出され、子どもが簡単についていってしまう背景には、大人に認められたいという承認欲求があります。言い方を変えれば、自分の親には認められず、家に居場所がない子どもがいちばん誘い出しやすい。一緒にゲームをしてくれたり話を聞いてくれたりする大人はいい人、優しい人に映ってしまうのです」