撮影/森清

「海猿」はいても「海蝶」はまだ…日本初の「女性潜水士」が誕生する可能性

【鼎談】作家×海上保安官×元AKB48
「海猿」という言葉で、2000年代に一躍話題となった海上保安庁潜水士。しかしながら、2020年になった現在でも女性潜水士は誕生していない。そんななか、女性版「海猿」ともいえる日本初の女性海保潜水士を描いた小説『海蝶』が刊行された。著者は小説家の吉川英梨氏。現役女性海上保安官の川原山由香氏と、元AKB48で海上保安官を父にもつ篠田麻里子氏をむかえて、スペシャル鼎談を行った。
小説『海蝶』の購入はこちらから

まるで蝶のように泳ぐ女性潜水士

篠田 日本初の女性海保潜水士の物語、フィクションとは思えないリアリティとスピード感で一気に引き込まれました。警察小説は多いけれど、海上保安庁を舞台にした小説はあまり見かけない印象です。なぜ、書こうと思われたのですか。

吉川 もともと、海上で起きた事件を扱う『新東京水上警察』シリーズを書いていたのがきっかけで、海上保安庁の方にお話を伺う機会ができたんです。その時に「海保のことをもっと多くの人に知ってほしい」とおっしゃっていたこともあって、構想を練り始めました。女性初の海保潜水士を主人公にしたのは親しみやすいかな、と思ったから。海保についてはそれほど知らなくても潜水士「海猿」は誰もが知ってますからね。

篠田 マンガやドラマで有名になりましたよね。

左より川原山由香さん、吉川英梨さん、篠田麻里子さん
 

吉川 そうそう。ただ、私自身が女性なので潜水士も女性にしてはどうだろうかと、『海蝶』が誕生したんです。「海蝶」は造語です。小説の中でも触れていますが、女性が水中を泳ぐ姿ってとてもしなやかで優雅だな、と思って、蝶が空を舞うようなイメージで名付けました。

川原山 実際は、まだ海上保安庁に女性の潜水士はいたことがないんです。

吉川 そうなんですよね。主人公の忍海愛(おしみ・あい)も男性と同じ条件の適性検査によって選抜され、過酷な訓練を乗り越えて国家試験を受け、ようやく潜水士の仲間入りを果たしています。法や組織の仕組み上では女性もなれると聞いていますが、やはり難しいのでしょうか。

川原山 私は子どもの頃から船も水泳も好きで、海に関わる仕事がしたくて海上保安庁に入りました。はじめの頃は潜水士になりたいという思いもありましたが、当時の男性の先輩たちに言われたのは「潜水士はついているものがついていないとなれないんだよ」ということ。セクハラという言葉がまだない20年以上前の話なので表現は微妙ですが、要は基礎体力の問題です。