野村克也氏が語った「リーダーにとって、『指導』よりも大切なこと」

「自分で考える力」を育てなさい
野村 克也 プロフィール

「教える」のではなく「導く」

そのような問いかけをきっかけに、選手が考え、問題点やヒントに気がついてくれればいいと考えた。そこから何かのヒントを得て、課題を克服するために努力する選手もいるだろう。

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そうした選手が懸命に努力してもカベを乗り越えられず悩んでいるときこそ、指導者の出番だ。

悩んでいる選手の話を、親身になって聞いてやるべきだ。ただ、そのときであっても、選手より先に、指導者が答えを言ってしまってはいけない。答えを先に言ってしまったら、選手はもう考えなくなってしまう。考えさせることが、指導の目的である。

それでもどうしても答えを求められたときは、

「私の場合は、こうやってその問題を乗り越えた」

「○○はこうやって対処していた」

と例を示すだけに私はとどめていた。

仮に自分の意見を述べるときも、「私はこう思うが、君はどう思うか」といった言い方を心がけたものだ。

私にとってはそのやり方が正解だったが、別の人間にとってはうまくいかないこともあるし、まったく別のアプローチで成功することだってあり得る。正解は無数にあるからこそ、選手には必ず自分で答えを出させることが重要だ。私も、よほどの間違いではないかぎり、選手が出した答えを修正したりしなかった。

 

結局、指導者の仕事とは、選手が自分の力で正解を見つけられるように導くことなのだ。教え込もうとしても、それは選手のためにはならない。選手自身が自分で学び、選び取ったものしか、本当の意味でその人の身につかないからだ。

そのときに指導者の武器となるのが、「問いかけ」である。

教えるのではなく、導くことが、その人間を本当に成長させる方法だと私は考えている。