純利益は5割減!地銀の収益は悪化し続け、5年もつかどうか…

未来の銀行はどうあるべきか・前篇
津田 倫男 プロフィール

これ以降のドラマの展開は省略するが、「買収」を巡る金融の世界に長くいた(そして現在も)私が、買収(M&Aとも言う)の助言の世界に飛び込んだのは1980年も終わりに差しかかった頃だった。

当時の都銀のニューヨーク支店には案件が豊富にあった。M&A成功率は私の感覚では2割以下だが、赴任当初の3年間はそれこそ毎月のように顧客と米国中を飛びまわっていた。

パックマン・ディフェンスの考案者

当時米国はM&A花盛りで、今でも伝説のように語り継がれる案件が生起しては消えていた。その一つが「野蛮な来訪者たち」という邦題で出版されたRJRナビスコを巡る三つ巴の買収劇だ。

主役は当時のナビスコの経営者、大手買収ファンド(当時は自らをそう呼んではいなかったが)、そしてそのライバルの投資ファンドである。取締役会を抱き込んだ経営者が勝つと思われたが、最初に名乗りを挙げた大手ファンドが勝利した。

そして、ファンドの投資先としては異例の食品・たばこ会社を経営することになったのである。

その過程で様々なプレーヤーが登場した。大手弁護士事務所、投資銀行などだが、著名なM&Aバンカー(M&A助言を専門で行うプロ)もいた。

彼が今回の『半沢直樹』で使われた「逆買収」、いわゆるパックマン・ディフェンスの考案者である。それは石油会社を巡る攻防で編み出されたといわれている。買収を仕掛けられたほうが逆に買収に打って出るのだ。

当時流行っていたテレビゲーム「パックマン」のように追われるパックマン(口をパクパクさせながら得点源となるドットを食べて行く、ゲーム中のキャラ)が、あるポイントを通過すると逆に攻守ところを変えて追う側に回るというルールに基づくものだが、当時私を含めて多くの大人がその面白さにはまった。

M&Aでは追う側が変わることも......(photo by iStock)

このゲームのパックマンに似た「追い詰められたものが、逆攻勢に出て局面を打開する」という、いかにも半沢好みの手法が、パックマン・ディフェンスである。詳しくは、電子小説『パックマン・ディフェンス 銀行の改革者たち』(雄多圭佑。ボイジャープレス)を参照されたい。

ともかく、パックマン(と以下省略)は成功確率が低く、また相手(もともの買収仕掛人で、転じて買収対象になる)を買い占めるための充分な資金が必要となるため、よほど念入りに計画しないと成功はおぼつかない。

米国でも数例あるのみで、現在ではあまり使われない。日本でも「敵対的」買収は増えてきたものの(デサントに対する伊藤忠など)、パックマン・ディフェンスが使われた例を私は知らない。

「事実は小説より奇なり」という諺もあるので、あるいは近々国内でもこの手法が現実化するかもしれない。

ちなみにドラマでは逆転勝利を収めた半沢が銀行に凱旋し、さらに重いテーマ「取引先の再建」に乗り出した。

そこで後篇では、顧客支援を含めた「銀行が本来、行うべき一つの姿」を描いてみたい。

次回に続く