新型コロナの感染拡大が続く中、始まったお盆休み。感染拡大防止のため、県をまたいでの帰郷自粛などの影響もあり、また、高齢者への感染を心配し、今年のお盆は親や祖父母に会うことを取りやめたという人も少なくないだろう。

今回のコロナ禍では、高齢者たちも困惑し、さまざまな問題も発生している。この時期だからこそ、改めて考えてみたい、親のこと、高齢者のこと。母と会って「どうしてこんなことしちゃうの!」と思うことも多かった。しかし桜美林大学大学院老年学研究科教授の長田久雄氏にも話を聞くと、また別の側面が見えてきたのだ。

通常の夏休みであれば里帰りでごった返す東京駅も閑散としている。両親や祖父母に会うのも自粛の夏。photo/Getty Images

コロナで半年ぶりに母と再会して気づいたこと

私には77歳の一人暮らしの母がいる。私は医療者の取材などが多いため、都内郊外に暮らす母とは、2月末以来、感染予防のために会うのを控えていた。そんな母から連絡があった。「ベッドのスプリングが傷んでしまって……。これを機会に、介護時にも使える電動ベッドを購入したいから、いっしょに観に行ってほしい」というのだ。

10年前に肺炎で入院したこともあり、コロナ禍ではかなり注意して行動をしていた母。通っていた体操教室も2月からお休みにした。出かけるのも、週に数回、混んでない時間に近所のスーパーに行くだけに留めているという。宅配も回覧板も玄関に置いてもらい直接受け取らない。近所の人とも極力会わないように、友達とも電話やLINEで連絡を取り合っているといつも話していた。「感染予防は徹底しているから大丈夫。子どもたちが帰ってこなくてもひとりで頑張るから」というのが、コロナ禍の母の口癖になっていた。

そんな母と約半年ぶりに会うことになった。母は何度も「ベッドを買いに行くのは不要不急かしら?」とやたら心配していたが、壊れたベッドを買うのは、不要ではなく必要なことだと説明をして、都心にあるショールームにでかけることにしたのだ。

しかし、久々に会った母は、半年前とはちょっと様子が変わっていたのだ。昨年あたりから少し腰が曲がり始めていたが、半年前よりも姿勢がかなり悪くなっているではないか……! ちょっと驚いて、「あれ? 以前よりも腰痛がひどかったりする?」とやんわりと質問をしてみると、今度は「え? 何? え?」と何度も聞く。マスク越しの声だと聞こえにくいらしく、耳を私の顔のすぐ近くに持ってくるのだ。「ちょっと待って、近寄りすぎだよ!! 感染予防に距離をきちんと保ってよ!」と慌てて離れた。すると「ごめんごめん、だってよく聞こえないんだもの!」と大きな声で返事をする。あれ?  そうか……、耳も遠くなったんだな。コロナ前よりも母の老化は驚くほど進んでいたのだ。

家具のショールームに行っても、母は耳がよく聞こえないために、スタッフの人の解説を近くに寄って聞いてしまう。さらに会話のときも声がとても大きくなってしまう。そのたびに、「あ、そんなに近寄らないで! 私が聞いておくから、後で説明するからちょっと待って」と何度も母を制する場面があった。

たまにSNSで「高齢者が街でソーシャルディスタンスもなく、大声で集ってモラルがない」と批判するコメントをみかける。しかし、それはモラルの問題だけでなく、「耳が聞こえないといった機能低下」によって、人との距離が近くなっているのでは……ということに気づいたのだ。

他にも、いっしょに行動していると、すぐにいろいろなところに触る。手すりや壁、エスカレーターのベルトなど、気づくといろんなところを触っている。最初「そういう風にいろんなところ、触らないほうがいいよ!」と強めに指摘していたが、足腰の機能も衰えてきている母親世代には、触るというより「つかまっている」のだろう。

モラルの問題ではなく、耳が遠いなどの機能低下でソーシャルディスタンスが守れないことも。photo/iStock