マクスウェルの悪魔復活! ミクロの世界では時間が戻った!

量子力学は宇宙の絶対法則も破る?
高水 裕一 プロフィール

量子世界では時間は逆転するのか?

レソビク博士らは、スイスとアメリカのチームと共同で、生物の進化プログラムを、量子コンピュータで計算していました。

進化プログラムとは、コンピュータ上に2つの仮想の「性」をつくって、双方の「性」から受け継いだ遺伝子を合体(交配)させ、さらに数%以下の確率で突然変異も起こるように設定して、自然界の遺伝子集団の動きをモデル化したものです。遺伝子は0と1だけで表現され、その動きを解析することで、進化というものの正体を探ろうというわけです。

さて、この0と1の動きは、「マクスウェルの悪魔」における気体の分子のようにエントロピー増大の法則にしたがうことが、情報熱力学からわかっています。プログラムが進むにつれ、最初は整然としていた0と1の秩序はどんどん失われ(図のA)、カオスのように乱雑になっていきます(図のB)。ところが、ある瞬間から逆に、0と1の配置がそろいはじめ、一定の秩序が生まれたことを観測したというのです(図のC)。

乱雑から秩序へという変化は、いうまでもなく宇宙の大法則に反し、「時間の矢」が逆戻りしたことを示すものです。

【図】量子レベルで観測された「時間の逆戻り」量子レベルで観測された「時間の逆戻り」 乱雑な状態になっていたキュービットに秩序が戻った!

博士らがこの結果を電子ジャーナル誌の「Scientific Reports」で発表するや驚きとともに迎えられ、「量子コンピュータで時間の逆転を初観測」といったニュースが世界を駆けめぐりました。「ついに人類はマクスウェルの悪魔をつくりだした!」というキャッチーな見出しもありました。それらはおよそ、このように報じています。

量子コンピュータにおける基本情報単位を「キュービット」といい、0、1、「その重ね合わせ」の3つの状態を表現する。実験では進化プログラムが立ち上がると、キュービットの変化パターンはどんどん複雑になり、規則正しく寄せ集めたビリヤードの玉が散乱するように乱雑になる

ところが、実験ではその状態が修正され、カオスから秩序へと「逆方向」にキュービットが巻き戻り、元の状態になった。それは、テーブル上に散乱したビリヤードの玉が、完全な計算にしたがって完璧な秩序をもつ正三角形に戻るのと同じである。すなわち時間が逆転したのだ

実験を2キュービットで行った場合は「時間の逆転」の達成率は85%だった。3キュービットで実験するとエラー発生が増加したため達成率は50%となった(量子の不確定性による)

この結果は量子コンピュータの開発へ実用的に応用可能。プログラムをアップデートしノイズやエラーを消すために使える

そして、博士が次のように高らかに述べたことが伝えられています。

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/