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マイノリティが日々傷ついている「無意識の差別」の正体

「マイクロアグレッション」とは何か?

今年5月、米ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に暴行され死亡しました。この事件をきっかけに、「ブラック・ライブズ・マター」(BLM)(直訳すれば「黒人の命は大事」)という言葉を掲げた黒人への暴力に抗議するデモが全米、そして世界中へと拡大しました。

BLMが拡大した背景には、以前から警察による非武装の黒人への暴行事件が続いており、しかも加害者の警官が罪に問われなかったこと、政治家によるヘイトスピーチ(差別や排外主義をあおる言動)、警官だけでない私人による黒人へのヘイトクライム(特定の人種・民族やセクシャルマイノリティに対する差別に基づく犯罪行為)が繰り返されるなど「黒人の生活や命がないがしろにされている」状況がありました。

こうした根深く構造的な差別の存在に対したまりにたまった抗議の声が、フロイドさんの暴行死を発火点に燃え広がったと言えます。

以下では、こうしたヘイトスピーチやヘイトクライムの裾野に広がる「日常的な差別」「意図せざる差別」について考えます。アメリカではこうした差別が「マイクロアグレッション」と位置づけられ問題化されていることを見つつ、マイクロアグレッションに苦しめられている人は日本にもいることを、在日コリアンをはじめ日本のマイノリティの方の調査を行ってきた筆者の経験を交えて紹介していきます。

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BLMのすそ野にあるもの

さて、フロイドさんの例のような事件はアメリカの黒人の置かれている差別的状況の見えやすい氷山の一角に過ぎません。

こうした事例を頂点とすれば、そのすそ野にはアメリカの黒人を取り巻く日常的な差別や不公正の存在があるのです。

例えば、黒人の日常はこんな出来事が当たり前にあると言います。ショッピングモールに買い物に行くと黒人にだけ警備員が張り付いてくること、レストランに入ると良い席には白人が案内され、黒人には厨房や入口に近い席があてがわれること、犯罪が起きると何の根拠もなく「黒人がやった」と言われること、言ってみればこんな「犯罪者扱い」や「二流市民扱い」が黒人の日常だと言うのです。

黒人を含め社会的マイノリティが日々経験するのは、近所の店や自分の通っている学校や職場で、「普通の」人との間で起きる、もっと日常的でわかりにくい差別である——そうした事態をアメリカにおける差別研究の第一人者、コロンビア大学のスー教授は「マイクロアグレッション」として紹介しました