新型コロナの影響で注目を集めている「マッチングアプリ」。スマホ一つで新たな出会いを探せるため、婚活の主流となりつつあります。

FRaU webでは、実際の取材に基づいた「アプリ婚活」のリアルを、共著作家の山本理沙さんと安本由佳さんによってノンフィクション小説としてお届け。アプリの「モテ技」テクニックも満載です。

主人公はコロナ禍で孤独を極め、本気でアプリを始めたアラサー男女。「結婚とは」「幸せとは」について見つめ直していくなかで、果たして二人はベストパートナーにたどり着けるのでしょうか?

【これまでのあらすじ】
同期に勧められアプリに登録した工藤直彦だが、なぜかまったくモテない。苦戦の中どうにか留美とのデートにこぎつけるも余計な一言のせいで大失敗。しかし奇跡的にアプリの女王・さくらとマッチング!初対面で彼女の魅力に陥落した
これまでの連載「本気でアプリを始めたら」を読みたい方はこちら

一筋縄ではいかないアプリ婚活

「なあ、淳也」

空になった重箱を一点に見つめ、直彦は恥をさらす覚悟で問いかけた。

「マッチングして、向こうから誘われてデートもいい雰囲気で終わったのに、連絡が途絶えたことってあるか……?」

在宅勤務後に同期の淳也と鰻を食べにきたのだが、正直、食事中も頭はこのことでいっぱいだった。

――なんで連絡がこないんだろう……。

アプリの女王・さくらとのデートは成功したはずだ。別れ際に勢い余って抱きしめてしまったが、彼女は嫌な顔も気まずい顔もせず「ありがとう、またね」と笑ってくれた。

それなのに帰宅後すぐに二度目のデートに誘っても、いっこうに返事がこないのだ。

「なんだよ、またしくじったのか」

淳也は直彦のアプリ婚活ネタを完全に面白がっている。

ニヤニヤしながら「相手は誰だ?」「教えろ」としつこいので「さくらさん」とだけ答えると、ふいに彼の顔から笑みが消えた。

「さくらって……もしかして料理家の?」

「料理家?ああ、確かそうだったかな。それにしてもなぜなんだ……いい雰囲気だったのに……」

淳也は無言でこちらを見つめている。しかしハッと思い出したように笑顔を作ると、妙に早口で直彦を諭した。