まだ受け身の婚活で消耗するの?

『仕事を頑張っている人が好きで、休日に美味しくビールを飲めたら最高です』

この一文を指し、徳光は「この文章のポイントが分かるか?」と留美に問う。

「別に……普通の文章にしか見えないけど……?」

「『仕事を頑張ってる』『美味しくビールを飲む』ってどんな男だ?よく考えてみろ。ほとんどの男に当てはまるだろ?こうやって『俺のことかも?』と勘違いさせる文章を入れ込むのは基本動作だ」

留美は目を丸くする。

「人は誰でも、自分の話をされるのが好きなんだよ。だから自己紹介文には『自分の話:相手の話=1:1』くらいの気持ちで書くのが吉だ」

自己紹介とは、なんと奥が深いものなのだろうか。そんな心理作用は考えたこともなかった。

「ねぇ、ちなみにこの『さくら』は、そういうカラクリを分かっててプロフィール作ってるの?」

「憶測ではあるが、その可能性は高いな。彼女はかなりの戦略家と俺は見た」

「ふぅん。アプリでそんなに戦略練って頑張ってるってことは、現実世界ではあんまりモテない子なのかな。26歳なんてまだ若いのに大変ね」

留美はつい嫌味を吐いてしまう。けれど実際、自分が20代の頃は黙っていても男がわんさか寄ってきて、出会いを探す必要なんて微塵もなかったのだ。

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「本当に何も分かってないな……」

徳光は哀れむように留美を見つめる。

「……女の年齢は重要なのは前にも言ったよな。26歳の市場価値は高いし、さくらは美人でもある。そんな女が立場に驕らず、自ら戦略を立てて狩りに出てるんだぞ?高慢に男を品定めするだけの32歳の女とどっちか強いか?答えは火を見るより明らだ」

「な、何よ。失礼ね……!」

「『さくら』はおそらく近いうちに大物を捕まえるだろうな。留美はどうする?まだ受け身の婚活で消耗するのか?」

徳光の辛口に、留美は口を噤んだ。