婚活市場において、「メス」は強い
「ランキングに入ること自体は難しくないぞ。女たちの写真をよく見てみろよ」
上タンを熱心に炭火で炙りながら、徳光はランキングに並ぶ女たちのプロフィール写真をスライドした。
「ほらな……。だいたいは、『おっぱい』の写真が2、3枚目に載ってる」
やや鼻の下を伸ばしながら、徳光は得意げに解説する。
「う、嘘でしょ……?アプリでモテるために、そこまでするの……?」
しかし彼の言う通り、ほとんどの女たちは胸を強調する写真を載せていた。
あからさまに水着写真を並べる女もいれば、ピチピチのノースリーブニットを着て胸を大袈裟に強調したり、また上目遣い写真の隅に巧妙に谷間を写り込ませる女もいる。
「結局、婚活市場において『メス』は強いんだよ」
「は?メス?」
「よくイケメンのモテ男が急にパッとしない女と結婚するパターンあるだろ?あれは……だいたい夜を抑えられてる」
下品な発言に、口元が引きつる。
留美は男の下らない煩悩を学ぶ気はないし、徳光から床上手のノウハウを教わるのも御免だ。下ネタを聞くために焼肉を奢っているのではない。
「お前みたいにプライドが高い女はムカつくだろうが、男の性欲、いや本能を無視するのはNGだぞ。味気ない美人より、夜を楽しめるメス力の高い女の方が男は断然好むからな。だからおっぱいは重要だ。真似できなくても理解はしとけよ」
「……でも、この『さくら』は胸の写真なんか載せてないわよ?」
「彼女は別格だよ。自己紹介の一文を見てみろよ。『必殺技は料理です』って、簡潔に女らしさと趣味をアピールしてるだろ?しかも料理家なんて、明るい家庭を想像しやすい。写真のバランスも完璧だし、おっぱいPRはなくても美脚の写真がある。これも強い」
スマホを覗くと、ゴルフ場で微笑むさくらがミニスカートからスラリと長い脚を披露していた。
他にも楽しげに料理をする横顔や、満面の笑みでワインを飲む写真もある。言われてみれば、『さくら 26歳』は明らかに自己プロデュース力に長けている。
「あと重要なのはこの一文だな。これは留美もすぐに真似できるぞ」
そして徳光は、彼女の自己紹介の一文を指した。