ニャンちゅうの声でお馴染み人気声優の津久井教生さんが突然転んだことから自身の異常に気付いたのは2019年3月のこと。それから半年の検査入院を経て、難病ALSに罹患していると知りました。病名が判明する直前に大きな腫瘍も発見され、摘出手術もすることに。痛みを伴うリハビリを必死でしながら、いまは要介護4の身体で声優の仕事を続けています。治療を振り返って執筆いただいている連載「ALSと生きる」第9回は、手術後に本格的な治療に入った退院前後のことをお伝えいただきます。

2019年12月、うしろを向いちゃったニャンちゅうと津久井さん 写真提供/津久井教生
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退院して最初にやろうとしたこと

12月23日に退院が決まり、その時点で再度模索したのが「『ALS』を治療できる方法や治験はないか?」という事でした。その時の主治医はこう言いました。

「前に検査入院の時に聞いていらっしゃると思いますが、今も『確たる治療法』はありません。ただ、現在治験を経て進行を遅らせると言われているものが2つあります。服用薬と点滴によるものです」

そうなのです、病院などでできる治療法がたった2つしかないのです。

病院での治療法の1つ目はALSの進行を遅らせる作用のあると言われている薬・リルゾール(商品名・リルテック)という薬の服用です、治験が済んだジェネリックの薬もあります。それでも難病申請が済んでから投薬を始めた方が良いと言われるくらい、高額ではあります。

ただし、この薬の効果は「ALSを治す」のではなく、あくまでも「進行を遅らせる」ということです、ネットで調べると容易に出てきますが、薬品の投与をされるときに「リルゾール治療について、寿命延長効果は平均 3 ヵ月であること、筋力・呼吸などの進行は変わらないこと、症状を改善させたり、軽減したりする働きはないこと」の説明を受けた上での開始になります。

つまり、「効きますよ」ではなく「このくらいの効果で進行を遅らせると言われています、個人差があるので判断して下さい」ということです。しかもALSを罹患して初期の段階でも、ある程度進行している場合は薬の効果が無いので、医師の判断で服薬を中止することもあります。現状の治験の結果と投薬の効果のデータでは、医師はこのようなアプローチをするしかないのだと思います。

「確実に全員のALS罹患患者に効果が無ければ効くとは言えない」が医師にとっての基盤です。

私は現在服用していますが、病状が進行しているALS患者の皆さんはほとんど飲んでいないようです。