〔PHOTO〕Gettyimages
# 香港 # 中国

周庭さんら逮捕の不条理…私たちは「中国の暴挙」を許してはならない

香港の自由と民主主義の行方

10人逮捕の意味

香港で自由と民主主義が存亡の危機にある。香港で国家安全維持法(国安法)が施行されてまもない2020年8月10日、香港警察は、23歳から72歳までの男女10人を香港国家安全維持法に違反した疑いなどで逮捕したと明らかにした

そのなかには、一連の雨傘運動の日本向けのスポークスパーソンであった最年少の周庭氏(アグネス・チョウ、23歳)が含まれていた。

最年長は、黎智英氏(ジミー・ライ、72歳)。香港で唯一、反中国政府の姿勢を明確にした民主主義推進派の新聞である蘋果日報(アップルデイリー)を発刊していた大手メディアグループ、ネクストデジタルの創始者だ。

逮捕時の黎智英氏〔PHOTO〕Gettyimages
 

APF通信は香港警察が周庭氏の自宅に大挙して押しかけ拘束し連行する現場映像を報じている。さらに香港警察はネクストデジタルや蘋果日報の社内のみならず、香港メディア界大物で民主活動家の実業家でもあった黎氏の家宅捜索も行い、黎氏が後ろ手に手錠をされて連行される様子の映像も伝えられている

日本で行われている「23日勾留」のような悪法は香港にはないため、周庭氏は香港時間の12日午後23時台後半に保釈され、その場の記者会見で「香港政府による政治的訴追」だとコメントした。

同様に黎氏も香港時間の13日午前0時20分に保釈された。保釈金はそれぞれ周氏が 20 万香港ドル(約275万円)とパスポート没収、黎氏が50 万香港ドル(約688万円)にくわえて5000万香港ドル(約6億8千万円)の資産を凍結された。

民主主義論を研究している筆者は、2014年に始まった雨傘運動の最初期からたびたび香港の現場でフィールドワークを行い、民主派から親中派の政治家、一般市民、学生からアクティヴィストたちまで、数多くの人々にインタビュー調査を行ってきた。今回逮捕されたなかにも面識のある者がいる。

もちろん、これまでも抗議行動のなかで多くの市民が逮捕されてきたことに胸を痛めてきたが、今回は国安法が適用されたという意味で、逮捕はまったく違う意味を帯びている

そもそも国安法は、中国の全国人民代表大会(日本でいう国会)で6月30日に全会一致で可決され、同日に香港政府が施行したものだ。違反者への最高刑は無期懲役である。

北京の指導者たちが香港での民主化要求の拡大を懸念し、導入し施行した法律であり、そのターゲットは極めて明確だ。それは、香港の高度な自治を保障したはずの「一国二制度」の事実上の無効化、すなわち香港市民が享受できるはずの自己統治と政治的自由たる民主化要求の弱体化である。

この北京の決定に対しては、さっそく旧宗主国のイギリスから批判がなされた。ドミニク・ラーブ外相は、中国政府が香港の引き渡しにおける約束を破ったと非難するとともに、数百万人の香港人に対しては英国市民権を取得する機会を提供すると明言し、さらにイギリスの国連大使であるジュリアン・ブレイスウェイトは国連人権理事会の場で国安法の問題点を主張した