侮辱的な婦人科の対応

ある日、生理が来なくなった……。

頭が真っ白になった。そのとき、どこかで聞いた「緊急避妊薬」という言葉を思い出した。インターネットで必死に検索し、翌日学校の帰りに産婦人科に行けば72時間以内に間に合うとわかった。本来、緊急避妊薬は生理が来なくなってからの服用ではなく、性交後72時間以内の服用が正しいが、当時は知識もなくとにかくどうにかせねばと必死だった。相手には私の行動を監視されていたも同然だったが、翌日であれば相手の仕事中に、監視の目もすり抜けられそうだった。机の奥に隠しておいた、お年玉から少しずつ貯めていた2万円を取り出した。

そして翌日、病院へ行った。そこは生まれて初めての産婦人科で、制服姿なんて私だけだった。家に帰って着替える時間はなく、そんなことをしていたら相手に拘束されてしまう。こうするしかなかったのだ。待合室で「あら、この子なんでこんなところにいるのかしら」「最近の若い子は困ったものね」そんな視線を浴びている気がした。あのとき感じた時間の長さを、私は一生忘れることはないだろう。

編集部注:本来、緊急避妊薬の効果的な服用は、性交後72時間とされています。ただ、桑沢さんも上記の中で伝えていますが、当時、緊急避妊薬の情報も少ない中、生理が来ない恐怖やそれでも続く相手からの要求などで、とにかく急いで対処しなくてはと緊急避妊薬を服用したそうです。当時の桑沢さんの状況や心理を、原稿ではあえてそのまま生かして掲載いたしました。

-AD-

それでも背に腹は変えられない、じっと待って診察室に行くと、その教師と同じくらいの年齢の男性医師が座っていた。硬直した。女性医師だけのレディースクリニックを選択したい気持ちはあったが、そのとき検索して出てきた女性医師のクリニックは価格が高く、男性医師の病院にするしかなかったのだ。

「何しちゃったの」とため息まじりに呆れ顔で聞かれた。「避妊に……失敗しました……」それが私の言える精一杯の言葉だった。最後の生理や行為の日にちを聞かれた後、「そしたらこれ読んで、サインして」差し出された小さな紙には、緊急避妊はあくまで緊急の手段であること、避妊法として完璧ではないことなど、基本的な説明があった。

最後には、「このような事態が二度とと訪れないように万全を期します」といったような文章があった。その文章に目眩を覚えながら、必死にサインをした。「これからはこういうことのないように」部屋を出る時、医師から言われた。ちなみに現在その病院は、未成年者は緊急避妊薬の処方に親権者の印鑑付き同意書が必要になっている。

それから、私は17000円を払い、2万円持ってきて良かったと冷や汗をかきながら、やっとの思いで薬を手にした。

「このような事態が二度と訪れないように万全を期します」の一言で、暴力を受けていることも、それで妊娠不安を抱いたことも、全部桑沢さんが悪い、頑張れば防げることなのに、と言われているようにも感じてしまったという。実際は生きるだけでも精一杯で、逃げる余地などなかったのに……。photo/iStock

私は薬をカバンに押し込み、急いで病院を出て、自動販売機で水を買い、人気のない暗い路地裏に駆け込んで、薬を飲み込んだ。そして間違っても処方されたことがバレないように、もらったものは全部ゴミ箱へ押し込んだ。その瞬間、「このような事態が二度とと訪れないように万全を期します」の文も頭の中に蘇った。誰も私が苦しい思いをしている側だなんて思ってくれないし、助けてくれない、私は自分がまるで、何か悪いことでもして社会の外側に放り出されたような、もう普通の世界には戻れないような、そんな感覚に襲われた。