作家がコロナを語るのは無責任? 激動の時代に「物語を書く意味」とは

【特別鼎談】真藤順丈×深緑野分×小川哲
小説現代 プロフィール

石戸 確かに発信に対する反応があって、アジテーターとまでは言いませんが、僕たちのようなジャーナリズムの世界に生きている人たちも含めて、言葉をうまく使える人がオピニオンリーダーとなっていく傾向はあります。

深緑 良かれと思って発信してしまうことで、私自身が扇動してしまうんじゃないかという怖さはあります。だから最近、私はずっと、物語性ってこれからどういうふうに必要とされるんだろうとか、そもそも物語性って何だったっけとか考えていて、自分だけが読めるようにしているFacebookをメモ代わりに長々と書いているんです(笑)。物語とフェイクは親和性があるので、物語の存在意義そのものに自分自身が悩んでいます。別にだからといって物語を書かないとかではないんですけど、今の社会でどういうふうに向き合って、どういうふうに使っていくのか、何が必要とされるのか、それは本当に物語にする必要があるのかとか、そういうことを最近はよく考えていますね。

 

「作家がコロナについて語るのは無責任」

石戸 真藤さん、いかがですか。

真藤 俺はデビューが2008年で、震災をまたいで今年で12年目ですが、震災のことで言うとひとつ長編を書こうとして、まだどこにも出せていない作品があります。震災をきっかけにして、定住することをやめて遊動民のように生きることにした家族の小説なんだけど、これは執筆が止まっていたんです。劇性を高めることの倫理的な問題や当事者性にはつねにジャッジされるし、そうこうするうちにコロナ禍になっちゃって……。ここ数ヵ月、コロナについて寄稿や意見を求められるかなと思ってちょっとかまえていたらひとつもなくて、つくづく自分はそういうオピニオン的なものは求められていないんだなと思いましたね。

小川 マジですか? 僕は死ぬほど頼まれたんですよ。

深緑 小川さんはSFだからですよ。

小川 あ、SFだからですかね。僕、数えたら、たぶん10個以上コロナ関連の仕事をこなしています。

真藤 俺はゼロだよ。1コもなかったよ。べつにもっと受注したかったってわけじゃないけど。

深緑 私も来てないです。インタビューをこの前受けて、その時にちょっと話題になったぐらいしかないですね。