周庭さん〔PHOTO〕gettyimages

周庭さん逮捕だけではない…恐怖が広がり学問の自由も侵害される「香港の現実」

懸念される社会全体の活力低下

8月10日、香港で国家安全維持法違反の容疑で10人のメディア人や活動家が逮捕された。

中国共産党政権に批判的な立場を貫く『蘋果日報』(アップル・デイリー)の創始者でアメリカの政界に太いパイプを持つ黎智英(ジミー・ライ)、その2人の息子、黎智英の経営するメディアグループ「壹傳媒」(ネクスト・デジタル)の幹部ら4人、学生団体「学民思潮」の元メンバーでフリーランス記者の李宗澤(ウィルソン・リー)、政治グループ「香港故事」メンバーの李宇軒、そして、日本ではよく知られている民主派政党「デモシスト」の元メンバーの周庭である。

200人以上の警察が一斉に「壹傳媒」の本社に家宅捜索に入り、資料やパソコンを押収し、黎智英らを連行する様子や、周庭が両手を後ろで縛られて自宅から連行される様子を、日本にいる多くの人も憤りを覚えながら見たのではないだろうか。

急激に広がる恐怖感、見えないレッドライン

国家安全維持法が香港で施行され、学校、メディア、インターネットに急速に影響が出ている。

教育局は、学校に国家安全維持法に違反する可能性のある教材や書籍の撤去を命じ、抗議デモのテーマソングのようになり、一部の人たちは香港の「国歌」のようにとらえていた「香港に栄光あれ」を学校で歌うことを禁じた。人々は次々とソーシャルメディアの投稿を削除している。

「国家安全」を脅かした証拠として採用されかねないからだ。国家安全を危険に晒すと判断されたインターネット上のメッセージは、警察が削除、規制、受信停止を要求し、プロバイダに個人情報を要求することもできるようになった。

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国家安全維持法が犯罪と規定するのは、国家の分裂、中央政府の転覆、テロ行為、外国勢力との結託の4つで、扇動、教唆、ほう助なども幅広く処罰されるという。

しかし、これらの定義は明確でなく、何をすれば罪を犯したとされるのか、レッドライン(越えてはならない一線)はどこにあるのかが分からず、戸惑う人々の間に恐怖感が広がっている。

欧米に支援を求める民主派の活動は、外国との結託とみなされる可能性が高いため、政治団体は解散や活動停止を宣言し、メンバーの一部は香港を離れた。羅冠聡、鄭文傑、朱牧民ら民主活動家6人は、国家安全維持法に違反した疑いで指名手配されている。

7月29日には、香港警察がソーシャルメディア上で国家分裂を唱えたとして、独立派団体メンバーの16〜21歳の男性3人、女性1人を国家安全維持法違反の疑いで逮捕した。このなかには政治団体「学生動源」の元代表・鐘翰林らが含まれている。同団体は国家安全維持法の導入を理由に香港での活動を停止すると発表しているが、ソーシャルメディアのページは削除していなかった。